安倍総理にとっての今後の総裁選の闘いは、孤立して圧倒的少数派となった石破派を完膚なきまで叩きのめし、完全に干し上げて崩壊に追い込むこと、さらには、それを党内への見せしめとし、石破派以外の議員に対して、その後の政権運営への絶対服従を誓わせるためのものとなるはずだ。その思惑通りに進めば、7月29日付本コラム「圧勝間違いない安倍総理が目指す総裁4選と“皇帝”への道」で述べた通り、安倍一強から安倍独裁、そして、総裁選ルールの改定による4選、最後は「皇帝」安倍晋三への道も開けてくる。安倍総理やその側近たちの頭にはそんな妄想さえ宿っているかもしれない。

■総裁選は「まやかし」で本格論戦を回避

 安倍政治のもう一つの特色は「まやかし」である。ごまかし、いんちき、にせものと言い換えてもいい。嘘をつくことは日常茶飯事である。また、正面から嘘をつくわけではないが、本質的な争点を隠し、ぼかし、あるいは、すり替えるという少し高等テクニックの「まやかし」も多用される。

 前述したとおり、総裁選の大きなテーマとして、過去5年間の安倍政治の評価というものがあるはずだ。例えば、アベノミクスの最大の目的であるデフレ脱却について言えば、5年半経ったこの6月でも、消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)で前年同月比わずか0.8%上昇だ。しかも、その上昇の大半は原油価格の高騰によるものでエネルギーも除けば、0.2%とほとんど横ばい状態。しかも、ニッセイ基礎研究所の調査によれば、世帯主の年齢によって年代ごとの支出品目や支出額を加味して各年代ごとに物価上昇率を算出すると、世帯主の年齢が60歳以上の世代にとっての物価上昇率は、39歳以下の世代にとって物価上昇率の約1.5倍になるという。つまり、物価は全体としてはほとんど上がっていないのだが、上昇分の打撃はほとんど高齢者に集中しているというわけだ。これは、完全な政策の失敗と言っていいだろう。 アベノミクスの失敗は、世界における日本の経済的地位の大幅な下落に最も端的に表れている。国の豊かさを示す代表的な指標である一人当たりGDPでは、2017年の最新版で日本は世界で25位。G7メンバーと言っても、もはや途上国と紙一重のところまで落ち込んでいる。アジア中東に限ってみても香港やイスラエルにも抜かれて6位。世界9位に上昇しているシンガポールには絶対に追いつけないくらい離されてしまった。

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安倍政権の失政に議論が及ぶことを避けるために…