■マスコミは自民党総裁選をめぐる政策論を丁寧に報道せよ

 絶対的劣勢にあると伝えられる石破氏は、ことあるごとに、総裁選での公開の政策討論の実施を求めている。しかし、地方で石破氏の講演会を企画すると、県連などから圧力がかかって中止に追い込まれることもあるようだ。安倍総理も前述したとおり、議論をなるべく避けるために出馬表明を遅らせている。短期間であれば、討論会などの実施回数も限られるであろうし、1テーマあたりに費やす時間も短くなってしまう。石破氏は、じっくり議論すれば、安倍総理を論破する自信を持っているようだが、逆に言えば、安倍総理は、論戦のリスクを避けるのが最大の防御となる。こうして相手の攻撃をブロックすれば、「石破は危険なタカ派」だとか「石破総理で経済は崩壊」というようなわかりやすいイメージ戦略と麻生財務相が振りまく「石破は派閥を否定したのに派閥を作った嘘つきだ」というたぐいの悪意に満ちたフェイクニュースを面白おかしく流し続ける攻撃を加えればよい。これによって、まともな政策論議を見えなくすれば大成功という徹底した「まやかし」作戦。そして、裏では各地方への「バラマキ」の約束と逆らったら干し上げるという「恫喝」とのコンビネーション作戦を徹底的に推進する。

 その結果、安倍総理圧勝、石破氏惨敗となれば、今後、「恫喝」「まやかし」「バラマキ」という「悪魔の必勝方程式」による安倍政治がさらにエスカレートすることになる。

 しかし、こうした安倍総理側の作戦は、少し冷静に見れば「見え見え」である。マスコミは、間違っても、安倍政権側の不真面目なイメージ誘導戦略に乗ることなく、安倍政権の実績評価と地道な政策論議をいかに「わかりやすく」、「関心を持ってもらえる形で」報道するのかに努力してもらいたい。そうでなければ、いよいよマスコミの存在意義はなくなったということになってしまうだろう。(文/古賀茂明

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古賀茂明

古賀茂明

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など

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