安倍政権の強みと言われる外交でも、日本にとって最大の貿易相手国である中国との関係は最悪のまま。ここにきて安倍総理の10月訪中という話も出ているが、これは、米国との対立で苦境に立つ中国が日本をうまく利用できないかと考えているというだけのことだ。
蜜月関係を誇っていたトランプ大統領にも、TPP脱却から始まり、鉄鋼アルミ製品への追加関税、さらには、自動車追加関税の脅しもかけられ、総裁選後には、いよいよFFRという新たな通商の日米二国間協議に引きずり込まれる見込みだ。もちろん、その行方は、TPPより厳しい内容になることは避けられない。こうした貿易上の不利益を必死に回避するために繰り出していた米国製武器の「爆買い」は全く効果がなかったことが証明され、今後はFFRでの譲歩を最小限にするためにさらなる「爆買い」を強いられることも確実だ。
北朝鮮問題でも、反北朝鮮キャンペーンの先導役を気取ってはしゃいでいたら、それが裏目に出て、非核化交渉では韓国が主役で、日本は全く相手にされず蚊帳の外。今後は、莫大な戦後補償と引き換えに口をきいてもらえるかどうかという状況だ。
こうした内政外交の失敗も、安倍政権の「まやかし」によってほとんど議論の対象にならない。「まやかし」をする者にとって、最も危険なことは、議論によってそのウソがバレることである。それを避ける最善の手段は、都合の悪い話については、「議論を避ける」ことだ。一方、都合の良い話にマスコミや国民の関心を惹きつけることも重要なサポート手段となる。
今回の総裁選では、安倍政権の失政に議論が及ぶことを避けるために、安倍総理は、まず、総裁選出馬の正式表明を遅らせている。議論の時間をなるべく短くして馬脚が現れるのを避ける狙いだ。一方で、前述したとおり、憲法9条改正に焦点が当たるようにマスコミを誘導している。9条改正については、石破氏が9条2項の戦力不保持・交戦権否認の条項を削除すべしと主張しているのをうまく利用して、「石破は危険なタカ派だ」という印象作りを狙っている。安倍総理は、9条は1項2項とも残したまま、自衛隊を明文で認めるという改憲案を提案し、「今と何も変わらない」から安全だという。では、何のための改憲かということになるが、いずれにしても「石破より安倍の方が平和志向だ」というイメージ戦略としては十分だということだろう。これも典型的な「まやかし」である。