著者:古賀茂明(こが・しげあき)/1955年、長崎県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通産省(経済産業省)入省。国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長などを経て2011年退官、改革派官僚で「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。元報道ステーションコメンテーター。最新刊『日本中枢の狂謀』(講談社)、『国家の共謀』(角川新書)。「シナプス 古賀茂明サロン」主催
著者:古賀茂明(こが・しげあき)/1955年、長崎県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通産省(経済産業省)入省。国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長などを経て2011年退官、改革派官僚で「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。元報道ステーションコメンテーター。最新刊『日本中枢の狂謀』(講談社)、『国家の共謀』(角川新書)。「シナプス 古賀茂明サロン」主催
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9月の自民党総裁選で一騎打ちになりそうな石破茂元幹事長と安倍総理 (c)朝日新聞社
9月の自民党総裁選で一騎打ちになりそうな石破茂元幹事長と安倍総理 (c)朝日新聞社

 自民党総裁選挙が盛り上がらない。安倍晋三総理と石破茂元防衛相の事実上の一騎打ちになることがほぼ確実になっているが、伝えられるのは、「安倍一強」の話ばかりだ。

【9月の自民党総裁選で一騎打ちになりそうな石破茂元幹事長と安倍総理】

 しかし、考えてみると、これはおかしなことだ。自民党総裁選は形式上は自民党という一つの政党のトップを決めるだけの選挙であるが、実質的には、これから3年間の総理を決める選挙であると言ってもいい。次の衆議院選挙までは、よほどのことがない限り、今回の総裁選の勝者が総理を務めることになるからだ。

 だとすれば、十分な時間を取って、これから3年間の政治の進め方について、候補者が議論を戦わせ、自民党員のみならず、広く国民に周知したうえで投票を行うべきだ。それについて異論を唱える者はいないだろう。

 しかし、石破氏が8月10日に正式な出馬表明をしたのに対し、安倍総理は、この時期に至っても「夏休み」と称して、総裁選出馬さえ明言せず、ひたすら総裁選に焦点が当たるのを避けているようだ。唯一の例外は、総裁選のテーマとして、憲法改正を中心にしようという意図で、秋の臨時国会に自民党の憲法改正案を提示していくべきだという点だけは「夏休み」前に表明している。マスコミは、それしか材料を与えられていないので、あたかも総裁選の中心テーマが憲法改正であるかのような報道を行っているが、その他の論点については、ほとんど何も報じていない。このまま行くと、政策論争がないまま派閥の論理で親安倍と反安倍に色分けされた勢力図のまま、8月下旬の安倍総理の正式出馬表明から1カ月にも満たない短期間で、政策論なき総裁選で終わってしまう可能性が高いのではないかと思われる。

■総裁選も「恫喝」で支持を固める安倍総理

 本来、今回の総裁選のテーマは、これから3年間の政治のかじ取りに関する議論と併せて、これまでの安倍政治の総括についても論じられなければならないはずだ。

 第二次安倍政権の政治を総括して、その最大の特色を言えと言われれば、何よりも「恫喝」による恐怖政治ということになるのではないか。今回の総裁選もその特色が非常にくっきりと出ている。来年の参議院選挙の公認問題や総裁選後の党・内閣の人事で、安倍総理に反旗を翻した派閥や個人は徹底的に干し上げるという「噂」が永田町に広まっている。安倍総理の性格は、執念深く残酷だということは、ここ数年の経験で誰もが「正しく」認識している。人事、選挙での徹底的冷遇という「噂」を流せば、派閥の領袖は、総裁選後の論功行賞で少しでも優位に立とうと、こぞって安倍支持に流れるはずだという計算。まさに「恫喝」政治そのものだ。

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総裁選は「まやかし」で本格論戦を回避