「料理中に油が弾けて、顏にかぶってしまって。大慌てで病院に行き、緊急の処置をしてもらったんですが、顏を包帯でぐるぐるに巻かれて、まるでミイラでした」
火傷も心配だったが、50歳で顔に傷を負ったことで、「結婚はもうとても無理」だと思ったという。ショックのあまり、彼に電話をしたら……。
「彼、すぐ病院に来てくれました。ミイラになった私を見て、冒頭の言葉をかけてくれたんです。うれしかった……。『今の医療は皮膚の移植も簡単にできるし、もし目が見えなくなっても、角膜移植だってできるから、何も心配することはない。僕は医者だから、どんな方法ででもキミの傷を治すから』と。不安でいっぱいでしたが、その言葉を聞いて心からホッとしたのを覚えています。おつき合いはしていましたが、50歳近くまで独身だった私は、結婚に踏み切れないでいました。でも、そのひと言で気持ちが固まったんです。どんな火傷を負っているかもわからない私を前に、しかも、こんなにストレートに気持ちをぶつけてくれて、この人きっと、素直な人なんだろうな、って。そう思いました」