そこで、私の経験として「習っていて良かった」と思うのは習字です。お手本を見ながら手を動かして、自分が書きたいと思った場所にむかって筆を置いていくプロセスは、集中力もつくし、器用さもアップします。

 私は習字も小学生の1年間くらいでやめちゃいましたが、振り返るとなかなかおすすめの習い事だと思うのです。夫は、そろばんを習うことで「この時間はこの作業をこなす」という「習慣」の基礎が身についたと言っていました。忍耐力や、粘り強さは、6歳から13歳くらいまでが最も発達しやすい時期です。そう思うと、習字はものすごく集中するし、通うことで習慣も身につくし、手先も器用になります。さらに、字が綺麗になる! という点は、なかなかポイントが高いかと。

 私は1級でたいしたレベルではありませんが、それでも「字が下手で恥ずかしい」という悲しい状況に陥ったことはありません。夫は、言っちゃ悪いですが字が驚くほど下手くそです。東大出の医者という肩書に救われているようなもので、それを知らない人が見たらきっと「なんだか頭悪そう」と思うであろう字です。夫に頼まれて、年賀状の宛先を代筆したこともあるくらいです。

 そうしたことを考えると、幼少期は塾のように「知識を先取りする」という、後から取り返せるようなものよりも、「積極的に手や指を動かすこと」「集中する習慣をつくれること」「日常でつかえること」がそろっている習い事をするのが、子どもの将来のためになるのではないでしょうか。

(文/杉山奈津子)

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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