さまざまな思いを抱く人々が行き交う空港や駅。バックパッカーの神様とも呼ばれる、旅行作家・下川裕治氏が、世界の空港や駅を通して見た国と人と時代。下川版「世界の空港・駅から」。第21回は中国のラサ駅から。
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まるで中国という国家の威信を示すかのような駅である。1番線のホームは、5車線道路ほどの幅がある。
「戦車でも走るんじゃないの?」
列車で一緒になった香港人が小声でささやいた。
しかしこの駅で行われていることを体験すると、彼のジョークも笑えなくなる。
改札口でパスポートと切符を見せると、職員から脇で待つように指示された。香港人も同じように改札脇に立たされる。そこには、すでに5人のチベット人がいた。
ラサ駅は、チベット自治区の中心的な駅である。それなのに改札を自由に通ることができないチベット人がいる。その脇を漢民族はフリーに通り抜けていく。これがラサ駅だった。
僕ら8人ほどは、別棟に連れていかれた。そこでチェックがある。