経験を重ねるごとに増えていく重責。何度も悩んで、苦しみながら戦い続け、ようやく「バレーが楽しい」と思えたのは今シーズンに入ってから。それでもなお、壁を超える苦しみを何度も何度も体験してきたからこそ、4度目の五輪挑戦を直前に控えた中でも、木村は常に「危機感」ばかりを口にした。

 五輪予選でいつも通りのプレーをするのがどれほど難しく、決して簡単に勝てる試合など1つもないこと。でもその戦いに打ち克たなければ、五輪への道は開かれないこと。

 覚悟を決めて臨む。その象徴となったのが、イタリア戦だった。盛り上げることよりも、点を取り、勝つために戦う姿はこれが初めての五輪予選となる選手にとっても大きな刺激を与えた、とセッターの宮下遥が言った。

「あんなにすごい沙織さんは見たことがなかった。(イタリア戦は)沙織さんに託そう、と私も決めていました」

 苦しみながらつかんだ五輪への出場権。目標はそこに出て戦うことだけではなく、その場で勝ち、4年前以上の成績を収めること。今度はまた、新たな壁を超えるための戦いが待っている。

「この大会を通して弱さや脆さが出たと感じているので、オリンピックではもっともっと強い、日本らしい、いい試合をするためにも、スパイカーは頑張って決定率を上げないといけないし、遥を中心にコンビバレーの質を高めたい。もっともっと、頑張りたいです」

 8月6日、対韓国。すべてをぶつける4度目の五輪が始まる。

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