「ものを食べない時間を増やす」ことで、内臓の疲れをとり、腸内環境を整える
「ものを食べない時間を増やす」ことで、内臓の疲れをとり、腸内環境を整える
AERA 2020年3月30日号より
AERA 2020年3月30日号より
青木厚(あおき・あつし、50)/あおき内科 さいたま糖尿病クリニック院長。専門は内分泌代謝と糖尿病。著書に『「空腹」こそ最強のクスリ』(アスコム)(写真:本人提供)
青木厚(あおき・あつし、50)/あおき内科 さいたま糖尿病クリニック院長。専門は内分泌代謝と糖尿病。著書に『「空腹」こそ最強のクスリ』(アスコム)(写真:本人提供)

 疲れがとれないのは、食べ過ぎが原因かもしれない。現代人の多くは「1日3食」が当たり前だが、「空腹」の時間をつくることも重要だ。AERA2020年3月30日号は、「空腹力」に着目した医師に食事の抜き方や注意点などを聞いた。

【図】朝食抜き・昼食抜きの1日のスケジュール

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「私たちがいかに食べ過ぎで胃腸が疲れているか、やってみればわかります」

「あおき内科さいたま糖尿病クリニック」の青木厚院長(50)は、力説する。1日16時間、「空腹」の時間をつくることで疲れにくい体になるという。どういうことか。

「1日3食とる現代人は、多くの人が高カロリーになりがち。休む間もなく胃腸は働き続けなければならず、疲弊します。胃腸が疲れると、その結果、体が疲れたり、だるくなったりするのです」(青木院長)

 疲れを防ぐのに必要なのが「空腹の16時間」だという。カギとなるのが飢餓状態に陥ると活性化する「オートファジー」だ。オートファジーは「自食作用」とも呼ばれ、細胞内の新陳代謝の仕組みで人体の古くなった細胞を新しく生まれ変わらせるシステムのこと。東京工業大学の大隅良典栄誉教授が仕組みを解明し、2016年にノーベル医学生理学賞を受けたことでも知られる。

 青木院長によれば、最後に物を食べてから12時間経つとオートファジーが始まり、16時間経つとほぼ確実に作用する。

「その結果、体にとって不要なものや老廃物が一掃され、細胞や組織などの機能が活性化します。体がリセットされるのです」

 空腹時間をつくると、「ケトン体」と呼ばれる物質が増加する。ケトン体には、酸化ストレスから神経細胞を保護する作用もあるという。

 10年前に舌がんになったのを機に、「空腹力」に着目した青木院長。実践しているのが、睡眠時間の前後に空腹の時間を組み込む食事法だ。例えば、夜8時ごろ夕食を取り、睡眠を挟んで次の食事は翌日正午ごろ。今では疲れ知らずになっただけでなく、ダイエット効果もあったという。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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