■授業だけでなく医療の世界も「遠隔」という時代に
遠隔授業を活用しているのは、もちろん日本だけにとどまりません。現在、世界中が外出を控える政策をうちだしており、たとえばフランスでは、外に出るには用意された書類に理由を書いて持ち歩かなくてはならず、違反した人には罰則が設けられています。
外出が個人の判断に任せられている日本よりも、かなり厳しく規制されているわけです。このように自宅待機を命じられた学生たちはどうしているかというと、CNED (国立遠隔教育センター)という国がつくった通信教育機関をつかって勉強する、という流れができているそうなのです。
CNEDは、もとをたどれば、なんらかの理由で学校に行くことができない学生のための通信教育の施設としてつくられました。小学校から高校までの教材がダウンロード可能なうえ、宿題も出ますし生徒間での意見交換もできます。
仕事をしていてうまく日中の時間がとれない人へ、生涯教育のための授業まで用意されています。ポイントは、民間の企業ではなく国の管轄という点で、正式に単位をとることも可能ですし、数百万人が同時に接続してもサーバーが落ちないほど、しっかりとつくられているとのこと。過去に、ハリケーンのような天災にみまわれたときも活用されたそうです。
私は、フランスにそのような機関があったことを、今回のコロナ騒動で初めて知りました。そして日本も同じように、遠隔授業を可能にする正式な機関をつくってもいいのではないかと思いました。
今回のような災害時にも役に立つのはもちろんのこと、不登校児や学校に通いにくい子どもたちにとって、遠隔で単位がとれるシステムはどんなにありがたいものかわかりません。
一方、医療に関しても似たような動きがありました。今回のコロナウイルスは、他人との接触によって感染してしまうのが特徴です。そのため慢性疾患で継続的な投薬が必要な人に対しては、病院にいかなくてもいいよう、電話や電子機器をつかった遠隔診療が可能になり、ファクスで処方箋を送付する動きが進められました。
遠隔診療は、もとはへき地や離島に住む人たちに向けて始まったものですが、賛否が分かれてしまいなかなか広まらずにいたものです。今後、家にいながら医師により診察が受けられる仕組みが身近になれば、外出が難しい精神疾患のある患者や、今後どんどん増えていく高齢者にとって、かなり心強いことではないかと思います。
会社も学校も、今後、どうなっていくか分からない憂鬱なニュースばかりがフィーチャーされ、暗い気分に沈んでしまいがちですが、コロナ対策をきっかけに新しい光があたり始めた分野も確かに存在するわけです。
「外出できない」という状況への対策により見直された便利な仕組みが、今後の子どもたちや、社会を支えていく若者たちの生活にうまくなじんで、どんどん適応されていくように願うばかりです。