「いいよ、離婚しよ。もう好きじゃないから」
そう言われた夫は慰謝料を求めることもなく離婚に応じ、子どもの養育費を今も払い続けている。
S子のケースが、もし男女が逆であれば、S子は慰謝料を求めていただろう。露木氏によると、近年の離婚では、たとえ妻に非があったとしても、条件や養育費などについて、夫は妻の言いなりになってしまうケースがとても多いという。
「以前は亭主関白な夫が暴力や浮気で家庭を壊す『昭和型離婚』が典型的でしたが、近年は男女逆転現象が起こっています。09年に『草食男子』が流行語に選ばれたように、離婚の現場でもこの『草食系離婚』が増えているのです」
特に30代までの男性は、すぐに争うことをあきらめてしまう傾向があるという。
「若年層では、妻の不倫が原因でも、『かまってくれなかった』『セックスレスだったから』などと浮気を肯定する理由を言われると、夫はフニャッとなって言い返せず、言いなりになってしまう。打たれ弱いがために、『いくら払ってもいいから早く離婚したい』と思う人も多く、そうすると自分に非がなくても、相手の言い値を払うという悲惨な結末になります」
都内に住む会社員のE里(26)は、現在、夫と別居し、離婚の話し合いをしている最中だ。2人の子どもは夫が実家で育てている。E里は、最近知り合った彼氏の家に居候をしているという。
「夫に飽きたっていうか、一緒にいて面白くなくなった。私が夜遊びに行って朝帰りしても何も言わないし、つまらない。一緒にいたらうざったいだけ。同じ空気を吸うのも嫌」
E里は、中学の時から交際をしていた夫と19歳の時に結婚した。まもなく1人目の子どもを妊娠・出産。初めて浮気したのは、その子が生まれた直後だった。