(3)親の意思をしっかりきょうだいで聞いておくこと。例えば、安い高齢者施設に親を入れることになっても、『お母さんがそれでいいと言っていた』という事実があるだけでも、きょうだい間でもめたり罪悪感を覚えたりすることがなくなる。
親側も、しっかりトラブル防止対策をしておきたい。遺言書の作成は基本中の基本だ。子どもたちは仲がいいからとか、まだ自分は元気だから大丈夫、などと考えないほうがいい。
前出の外岡さんは、こう話す。
「自分の介護戦略を立てる際には、ピンピンコロリバージョン(死ぬ直前まで元気でいられる)と、病気や認知症などで生活がままならない状態で長生きしてしまうバージョンの二つのパターン別に考えるとよいでしょう。後者の場合、施設に入る際の条件や入りたい施設、どこで死を迎えたいのか、介護状態になったときに子どもたちの誰に世話になりたいのか、などを書いておくとよいと思います。認知症になり判断能力が衰えた場合の財産管理も重要。一番信頼できる人と任意後見契約を交わすのも一つの手」
介護してくれた子どもに自宅を譲りたいからと、家の名義変更(生前贈与)を考える人もいるかもしれない。相続に詳しいフジ相続税理士法人の代表社員、税理士の高原誠さんはこう話す。
「同じ贈与でも、死後のほうが一般的に税金は安くなります(贈与税より相続税のほうが安い)ので、なるべくお金をかけずに子どもに譲りたい場合は、死後にしましょう。ただ、遺言書や(保有する資産を信頼できる家族に託し、管理や処分を任せる)家族信託がなかったときに必ずその子どもに渡るとは限りませんので、やはり遺言書は大切です」
(本誌・大崎百紀)
※週刊朝日 2020年10月2日号