対象は6親等以内の血族のほか、3親等以内の血縁関係のない姻族。故人の介護など無償の労務を提供した場合に限られる。

 相続コーディネーターで相続支援会社「夢相続」代表取締役の曽根恵子さんは、法改正前の妻の立場についてこう話す。

「同居している両親の介護をするのは相続人である夫よりも妻であることが多いのに、いざ相続となると、妻は相続人ではないので遺産分割では発言権もなく協議にも入れなかったのです」

 だが、この法改正でも、介護者の努力が報われるようになったとは言い難い。介護を13年余り継続的に行い、「同居の親族の扶養義務の範囲を超えて、相続財産の維持に貢献した」と評価された相続人の妻の寄与分が、200万円だったという裁判事例もある。外岡さんは指摘する。

「いまだに『身内の介護は無償ですべきものだ』という根強い常識や思い込みがあります。法改正されたとはいえ、決して無条件で認められる権利にはなっていないんです」

 こうしたきょうだい間の争いについて、曽根さんは言う。

「相続でもめても仲良く、というのは今まで聞いたことがありません。言葉とか態度とか、きょうだいならなおさら流せない。一生許さないという感じです。だから争ってはだめなんです」

 では、介護と相続をめぐってもめないようにするにはどうするべきか。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは、富山県で一人暮らしをする母親の遠距離介護のため、首都圏に住むきょうだいと協力している。自身の体験から「仲良く介護」するためのヒントを三つ教えてくれた。

(1)子ども同士で役割分担すること。不公平感が出たり、ストレスがたまったりしないようにするなどの配慮が大事だ。

(2)LINEなどのアプリを有効利用すること。きょうだいグループを作って親の状態を伝え合ったり、必要なものを買いたい場合に相談したりする。レシートを撮影して写真で送れば、介護家計簿みたいな記録にもなる。グループのやりとりは、後に議事録のようにもなる。

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