笹子トンネル事故でクローズアップされた日本インフラの老朽化。隠れた危険性を抱える場所は、ほかにどこがあるのか。専門家に聞いた。
「最悪の場合、濁流が押し寄せ死者は数万人を超す。早急な撤去以外に解決策はありません」
切迫感を込め、「天ケ瀬ダム」(京都府宇治市)の危険性を挙げるのは、今本博健・京都大学名誉教授(河川工学)だ。
「1964年竣工で、コンクリートの強度に不安があるのです」
砂利や砂をセメントで固め、細長い鉄棒を入れた「鉄筋コンクリート」の建物はかつて、正しく造れば維持・補修の必要はなく、大地震でも崩壊しないとされてきた。
ところが、68年の北海道十勝沖地震で、コンクリートの柱がひび割れし、鉄筋がむき出しになる被害が発生。80年代に入ると、砂利や砂がアルカリ性の水分と化学反応して膨張し、ひび割れを起こすことが、高速道路の橋脚で確認された。
これに加えて、今本さんが天ケ瀬ダムに対して危機感を募らせている理由が、住宅地への近さだ。ダムの約3キロ下流には人口約19万人の宇治市の中心部があり、さらに下れば大阪市などの大都市圏が広がる。
現地を訪ねてみた。遊歩道から見る限り、天ケ瀬ダムは堅固なコンクリートの塊に見える。しかし、今本さんは言う。
「ダムは周辺の岩盤に支えられて水圧に耐える構造。59年にフランスで同じ構造のダムが決壊したときのように、予兆などなく一瞬で崩壊します」
このほかにも、識者からは鉄橋や電波塔、鉄道など、さまざまなインフラで、具体的な危険地点を指摘する意見が寄せられた。
※AERA 2013年1月21日号