受験生を送り出す高校は、情報科目の導入に懐疑的だ。宝仙学園中高共学部理数インター(東京都中野区)の富士晴英校長はこう話す。
「従来の共通テストと試験方式が同じならば、結局知識を問う出題になってしまう。情報とは、自分で答えを探し求めるための学びのツールであって、長年の蓄積がある国数社理英とは異なります。思考力、判断力を求めるという共通テストの考え方とも矛盾するのではないでしょうか」
■情報系学部は採用か
ITは日進月歩で、せっかくテストのために覚えた知識がどこまで通用するのかも疑問だ。それでも、「影響力の大きい大学が採り入れれば、対策を講じないわけにはいかない」(富士校長)という。
石原さんは導入される大学について、「私立大の情報系、データサイエンス系の学部は採用するかもしれない。国立大は国立大学協会の意向に左右されそうだが、東京大、京都大のような難関大学は積極的には採用しないのではないか」とみる。
「やること自体は時代の趨勢(すうせい)で悪くはないと思います。ただし、中にはIT知識にかなり長(た)けている生徒もいる。先行している生徒には、情報処理技術者試験のレベルに応じて、試験を免除したり点数を配分したりするなど、柔軟な制度設計のもとでやればいいのではないでしょうか。また『情報I』は2単位科目なので、試験時間や配点をどうするかも関心がある。地歴の『総合科目』を含めて制度設計を早く知りたいところです」(石原さん)
24年度以降の共通テストはこのほか、「地理歴史」「公民」の2教科が現行の10科目から6科目になるなど、6教科30科目から7教科21科目に見直される方向だ。センター試験から共通テストへの移行は、英語の民間テストの活用や国語と数学の記述問題で混乱が生じたが、受験生に余計な負荷を与えないようスムーズにシフトしてほしい。(ライター・柿崎明子)
※AERA 2020年11月30日号