コロナ禍でオンライン授業が広がった一方、プログラミング教育も進む。小学校では今年度から必修化され、大学入試の出題範囲に「情報」が検討されている。AERA 2020年11月30日号の記事を紹介する。
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大学入試センターは2024年度以降の大学入学共通テストで、「情報」の教科を新たに設ける素案をまとめた。大学や高校などの意見を踏まえ、20年度中に一定の結論を公表する予定だ。
素案通りの実施となれば、現在の中学2年生が高校3年生で受験する時から対象になる。試験方式は当初、パソコンを使って解答するCBT(コンピューター・ベースド・テスティング)方式を採用する案が検討されたものの、会場やパソコンの確保など環境を整えるのは難しいとみて、24年度は他教科と同様に紙のマークシート方式で実施することになりそうだ。
「情報」が検討される背景には、政府がICT人材の育成を進める狙いがある。16年に当時の安倍晋三首相が、成長戦略づくりを担う「未来投資会議」(今年10月に「成長戦略会議」に改組)を設置。ビッグデータやAI(人工知能)、ロボットといった先端技術の活用などが検討され、学校教育でもICT活用を進めることに。小・中学校の児童・生徒全員にパソコンなどの端末機器を配布する「GIGAスクール構想」を策定し、4610億円の予算を計上した。
■ITパスポートが参考
新指導要領では誰もがICTを活用できるようにすることを目的に、20年度に小学校、21年度に中学校、22年度に高校で情報教育を必修にする。高校は「情報I」を必修科目に、さらに「情報II」は選択科目として設置。プログラミングや、データサイエンスにアプローチできるスキルを身につけることが期待されている。
共通テストに検討される「情報」について、駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一さんは「経済産業省が認定する『ITパスポート試験』といった資格試験の出題が参考になるのではないか」と予測する。同試験は情報処理技術者認定のための国家試験の一つで、基礎レベルにあたる。
「パソコンに詳しい高校生ならなんなくクリアできるレベルだが、全く興味のない生徒は負担に感じるかもしれない。問題は指導者で、専門の先生が少ない。私立ならば外部の講師に依頼するなどやり方もあるが、地方の公立高校などは難しいかもしれない」(石原さん)