逆に予め時期監督候補を決めておく方法もある。1軍監督就任へ向け、2軍監督などから指導者経験を積ませる。過程では将来の主力となる若手選手への英才教育ができるメリットもある。

 しかし球団内の方針やパワーバランスが崩れると、プラン全てが水泡に帰す危険性もある。現在迷走中のオリックスが典型だ。

「1軍監督は田口壮が既定路線だった。2軍で経験を積み、数年1軍ヘッド格をやって監督という流れ。しかしチームがあまりにも勝てないことでブレが生じた。西村徳文前監督がシーズン途中で辞任。シーズン中での監督昇格はさせられない状況下、中嶋聡監督代行を据えた。しかしチームの低迷は酷く、田口コーチの責任問題まで出て来たため、多少の時間が必要となった。もしかすると従来のプラン自体、再考される可能性もある」(関西テレビ局スポーツ担当)

 田口は選手時代にオリックス(当時はブルーウェーブ)で優勝経験があり、メジャーでもカージナルス、フィリーズと2チームで世界一になったレジェンド。16年から2軍監督、19年からは1軍野手総合兼打撃コーチと着実にステップアップしていた。しかし昨年、チームは早々と最下位に低迷し、西村監督が8月20日で辞任。流れが大きく変わったと見られ、21年から外野守備走塁コーチと立場的には格下げとなった。

『監督在りき』のチーム編成は、オリックスのような不慮の低迷時に大きく揺らいでしまう危険性がある。

「結局、結果が出れば成功になる。楽天は野村克也、星野仙一という知名度抜群の監督を招いた。2人は東北地方とは何の縁もゆかりもない。就任時は大きな反対意見が出た。それが今では楽天を成功へ導いてくれた救世主のような扱いをされる。石井も現在は叩かれているが、結果を出せば手の平返しで英雄扱いされるはず」(セ・リーグ球団OB)

「物事の変化をもたらす時に、勇気や覚悟を持つことはすごく大事なことなので、何を言われようがブレずに邁進して行くことが大事だと考えています」(石井GM兼監督)

 いつも飄々としていて笑いをとる。熱い言葉を発することのない男が、公の場でここまでの決意表明をした。それ相応の準備をしているのは想像に難くない。短期間での監督交代は気まぐれでも何でもなく、中長期視点でのマイルストーン。大きな結果につながりそうな気もする。