「模擬国連部の強みは、相手を議論でたたき潰すのではなくて、周りを生かして自分を生かすこと。これは推薦でも評価されている点だと思います」
筑波大附(東京)は、これまで6人の推薦合格者を出している。その1人が、法学部4年でクイズプレーヤーの鈴木光さんだ。前身の東京高等師範附属中時代には、鳩山一郎元首相らが輩出。一般選抜でも昨年は30人台の合格者が出た国立の伝統校だ。
一方で、例えばクラスを文系・理系に分けるような、受験中心の授業はしない。
どういう授業なのだろうか。1年生の「世界史」をのぞかせてもらった。クラスは40人程度。教師はプレゼンテーションソフトで歴史の流れを説明しながら、生徒に積極的に問いかけていく。
教師「ヒトラー政権の政策は全体主義で軍備を増強する。全体主義って何?」
女子生徒「国家総動員的に、みんなで同じ目標に向かっていくイメージ」
教師「みんなで頑張るのは良いことだよね?」
女子生徒「個人の意思が尊重されない」
教師「いいとこを突いた。じゃあ、全体主義をこのクラスでやるとどうなる」
男子生徒「スポーツ大会に向けて、強制的に昼休みも返上で、皆にひたすら練習させるとか」
授業で自分の意見を言っていい雰囲気が、筑波大附の伝統だという。
これを支える一つの要因が内部生の存在だ。筑波大附には小学校と中学校もあり、小学校から自分の意見を促す授業がされている。高校では3分の1の生徒が小学校から、もう3分の1が中学校から、残りが高校からという構成になる。熊田亘副校長はこう説明する。
「高校からの生徒も学校の雰囲気に慣れると内部生と同じくらい意見を言うようになります。その中で生徒は個性を伸ばしています」
こうした中で、昨年は日本生物学オリンピックで2人の生徒が金賞と銅賞を受賞、日本言語学オリンピックでも金賞と銀賞を受賞するなどした。
「本校のモットーは自主・自律・自由。コンテストに学校から参加させるようなことはしません。生徒が自ら動いている。東大に推薦で受かる生徒は特に好奇心が強く、積極的に活動しています。受験の指導だけをやってほしいと望む生徒は本校にはあまり来ないです」
(本誌・吉崎洋夫)
※週刊朝日 2021年3月12日号