「東大ではシリコンフォトニクスの研究が盛んだと知り、強く志望するようになりました。私には何々オリンピック優勝といった実績はなかったですけど、工学部の先生は東大で何を勉強したいのか、その意義は何かということを見ていたように思います」
山形東は各地の先進校に教員を派遣し、探求活動について学んできた。佐々木さんはこう語る。
「探究活動を通じて生徒のやりたいことが明確になりました。それを実現するには東大が最も適しているとの結論に至った生徒もいます。理想的な志望動機だと思いました」
山形東が参考にしたという学校の一つが、08年にノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎さんの母校・藤島(福井)だ。県立校で、4年連続で推薦合格者が輩出している。
強さの秘訣(ひけつ)は、2月19日に同校の体育館や武道館で開かれた2年生によるポスター発表でもうかがえる。参加者によると、2~4人ほどのグループに分かれ、自分たちで決めたテーマについて発表をする。1、2年生や教員らが周りを囲んで聞く。
一通りの発表が終わると、「その数字は何を表しているの」「ここの数字が増えると、こちらも増えるのか」などと質問が飛び交ったという。発表をした生徒は、「かみ砕いて説明するのに苦労しました」と振り返る。
古野哲志進路指導部長は言う。
「SSHの課題研究で培った力が推薦合格にもつながっています」
SSHとはスーパーサイエンスハイスクールの略だ。文部科学省が先進的な理数系教育に取り組む学校をSSHに指定し、支援している。先のポスター発表は、この取り組みの一つだ。
山形東と同様に、自ら設定したテーマの研究を進めて発表、論文執筆という形でまとめる。先の生徒はこう語る。
「徹夜もして大変ですが、研究を通じて課題を解決するためにどうしたらいいか考えるようになったり、データの信憑性も確かめるようになったりして成長したと感じます」
これまでの推薦合格者は英語ディベート大会や海外研修、模擬裁判選手権などにも積極的に取り組んだ。大学で何を学びたいのか、社会でどう生かしていきたいかなどを明確に語れる生徒たちだったという。古野進路指導部長はこう語る。