私 「センターができた何十年前とは、県の指針や医ケアの子どもの数も大きく変わっていると思うのですが、今後も方針は変わらないのでしょうか?」
ドクター 「あとは県に聞いて下さい。県が小児科医と看護師をたくさん配置してくれなければ無理ですね」
これが、7年間ほぼ毎月お世話になっていた施設との最後の会話でした。
看護師さんたちが長女を可愛がって下さり、安心して預けられる場所でした。何より、何の感情もなく「呼吸器は扱いが大変だから無理」と、当然のようにバッサリと切られてしまったことにとても悲しくなりました。
人工呼吸器を使用している子どもは複数の医療的ケアが必要な場合が多く、入院するとたくさんの人手が求められます。一方で、大半の家庭は夜間のケアを家族だけで行っており、定期的に預けられる場所があれば介護者やきょうだいの負担は大きく軽減します。
私は、レスパイトを利用して1か月に数日でも深く眠ることにより、生活をリセットすることができました。
レスパイト施設の人員不足と家族の負担軽減の折り合いをつけていくためには、どうすれば良いのでしょうか?
■医ケア児の環境改善の第一歩
日本の医療現場では、まだ小児専門のソーシャルワーカーは多くありません。でも、ソーシャルワーカーは、患者さんの困りごとを傾聴するだけでなく、環境に直接働きかけたり、地域でのつながりを構築していくことも大切な仕事です。
本来、高度医療が必要な子どもほど家族支援のニーズも高まるはずですが、実際にはかかりつけの大きな病院以外に地域とのつながりを持ちにくく、ゆっくりと話せる相談場所も預け先もないために、夜間の医療的ケアも不安や悩みもすべて、家族で抱え込まなければならないケースが多く見受けられます。
そこで、医ケア児の環境改善への第一歩として、小児科医の友人あーちゃんの全面的な協力の元、今年4月に小児科クリニック内に、「おうち支援部」という家族支援専門の外来を立ち上げることができました。
現在、おうち支援部では、地域での医療と教育と福祉の連携を主軸に、関係機関と定期的に勉強会を開いて情報交換をし、障害児育児について知ってもらう機会を作るなど、地域でのレスパイトの受け入れ病院の開拓を目標に会議を重ねています。
まだまだ始まったばかりのプロジェクトですが、将来的に小児に関わる専門家の人数が増えれば、多くのご家族の孤立を減らし、レスパイトを含む必要な支援を届けることができると思います。我が家の話にとどまらず、日本で暮らす障害のある子どもや介護者が生活しやすくなるために、今、ソーシャルワーカーとして何ができるのかを模索しています。
〇江利川ちひろ/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ
※AERAオンライン限定記事