※写真はイメージ(gettyimages)
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石井直方(いしい・なおかた)/1955年生まれ。東京大学名誉教授、理学博士。ボディビルミスター日本優勝(81、83年)・世界選手権第3位(81年)(写真:本人提供)
石井直方(いしい・なおかた)/1955年生まれ。東京大学名誉教授、理学博士。ボディビルミスター日本優勝(81、83年)・世界選手権第3位(81年)(写真:本人提供)

 長引くコロナ禍で体はなまるばかり。運動しようにも、照りつける日差しがやる気を失せさせる。それなら、日が暮れた時間を生かしては。実は効果も高いんです。AERA 2021年8月30日号は「夜トレ」特集。

【図を見る】筋トレで得られる効果はこんなにもある

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 スカートのチャックが閉まらなくなった。

 中部地方に住む大学生の櫻井香織さん(21)は2019年の冬、入学式以来、半年ぶりに着たスーツが窮屈なことに気がついた。オーケストラ部の公演直前。舞台裏で息を止め、勢いでチャックを上げた。そういえば最近、顔が丸くなったかな……。自宅に戻って体重計に乗ると、60キロの大台を超えていた。

「このままじゃあかん」

 ついに20年夏、ダイエットを始めた。授業とバイトの合間に、お金をかけずに痩せたい。行きついたのが、毎日午後6時に行う筋トレだ。自宅でユーチューブの動画を見ながら30分鍛え、ボクササイズで有酸素運動。夕方に外出する際は筋トレをしてから出かけた。これまで運動経験はなかったが、10カ月の奮闘で、10キロ痩せた。

「友達に後ろ姿や足がきれいになったといわれて、引き締まった体もいいなと思えました。ワンサイズ下のブラウスやミニスカートも自信を持って選べるようになりました」。いまは52キロ。週1回ほどのトレーニングで体形をキープしている。

■“夏太り”の季節は長い

 2度目のコロナ禍の夏。テレビで五輪選手の活躍を見ながら、自分のたるんだおなかを確認してうんざりした人も多いだろう。実は、夏は油断すると太りやすい。冬は気温が低いので体を温めるために基礎代謝が上がる。それに対して、夏は基礎代謝が下がり、エネルギーの消費が減るからだ。秋になっても暑さは続き、コロナ禍も収まりそうにない。ジムに行くのはおっくうだし、朝は1秒でも多く寝ていたい。そんな人たちにお勧めなのが、冒頭の女性がチャレンジした夕方の運動だ。

 筋生理学が専門の石井直方・東京大学名誉教授はこう話す。

「筋肉をつけて引き締まった体を目指すなら、むしろ午後、なかでも昼過ぎから夕方です。体温が上がり、交感神経の働きも活発になり、身体能力が高くなります。同じトレーニングをするにしても、午前よりも夕方の方が、回数もセット数も多くこなせるという報告もあります」

 夕方はアスリートが好成績を出しやすいともいわれている。さらに、筋肉を作り、脂肪を分解、体を修復するのも夕方から夜だ。石井さんが解説する。

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