写真家・三好和義さんの作品展「世界の楽園・奄美 沖縄」が10月1日から東京・丸の内のエプサイトギャラリーで開催される。三好さんに聞いた。
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今年7月、ユネスコ世界遺産委員会は「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」を世界自然遺産に登録すると決定した。
今回の写真展はこれに合わせたもので、三好さんが長年撮り続けてきた奄美、沖縄地方の自然風景の作品を展示する。
会場で目を引くのは、天井から吊り下げられた大きな2枚の布。つやと透明感のある布には亜熱帯の不思議な植物がプリントされている。
「それが窓際の薄いカーテンのようにゆらゆらと揺れる。写った葉っぱが揺れているような、風が感じられるような展示にしたい」と、三好さんは説明する。
一つは「板根(ばんこん)」と呼ばれる迫力のある曲がりくねった板状の根で、「沖縄県北部、やんばるの森に近い場所にある、サキシマスオウノキです」。
もうひとつは奄美大島の金作原(きんさくばる)原生林。霧の流れるジャングルに高さ10メートル以上もある巨大な木生シダ、ヒカゲヘゴが群生している。「これだけ奥行きのある大きなヘゴの森はなかなかない」。
■ヤシの木の下で遊んだ少年時代
これまで世界各地を旅してきた三好さん。鮮やかな自然風景をライフワークの「楽園」シリーズとして写してきた。
その原点となるのが沖縄県・宮古島だ。中学時代に初めてこの島を訪れてから半世紀になる。
「ぼくが写真を仕事にしたいと思うようになったのは、『カメラマンになったら海や南国に行けるんだ!』という夢から。ぼくの頭の中には確かな『楽園』のイメージがあった」
三好さんの故郷、四国・徳島の駅前には南国のシンボル、ヤシの木がたくさん植えられている。
「ぼくはこの駅前で生まれ育った。幼いころからヤシの木の下で遊び、昼寝をした。小学校時代、うちはバナナの輸入業を営んでいたので、南国の香りにあふれていた。やがて、バナナの倉庫はぼくの暗室になった」
中学生のとき、見習いの先生が宮古島の写真館の出身で、先生を訪ねて島に通った。高校時代、撮りためた写真を「沖縄・先島」にまとめ、銀座ニコンサロンで発表した。