マングローブの海辺に限らず、海岸を撮る際は、潮の満ち引きによって、その形が変わってくる。
「そんなことを考えながら撮影のスケジュールを組んでいくのが面白い。だから、釣り人と似ているとも言われる。島の人にとっては潮の動きをつかむのは、当たり前のことですけど、都会にいると、そういうことを忘れてしまう」
■足元にハブが
マングローブの生い茂る西表島の川をさかのぼると、そこには滝がある。
ひときわ大きな写真はナーラの滝。落差約25メートル。周囲にはシダやこけむした岩があり、なかなかワイルドな雰囲気だ。
「途中までボートに乗って行って、そこから数時間歩いてたどり着いた、いわば『楽園の入り口』。この上には未知の、もっとすごい世界があるんだろうな、というイメージで撮りました」
白い霧が湧き上がる熱帯のジャングルのような写真はやんばるの森。
「撮影していると、カエルや鳥の鳴き声が聞こえてきた。その響き方から、森がずーっと奥まで続いていることが感じられた。恐竜が出てきそうな原始の雰囲気だった」
写真は林道の橋の上から写したものだが、この場所を選んだのは見通しのよさだけでなく、もうひとつ、理由がある。森のなかには牙に毒を持つハブがいるのだ。
「それでも夜に撮ったとき、道端にハブがいましたよ。ヒメハブ。ホンハブに比べれば毒が弱いとはいいますけれど……」
沖縄の森は1年中、深い緑をたたえているが、春先になると明るい新緑が加わる。豊かな緑のグラデーションが現れ、森の立体感が急に増したように感じられる。
「このやんばるの森は4月初旬に写したんですけど、沖縄の新緑はこんなに早いんだ、と思いましたね」
そのころになるとホタルも舞う。
「昨年1月、西表島に行ったら、チョー暑かった。その後、ホタルも撮りたいな、と思って、場所も調べていたんですけれど、コロナで行けなくなってしまった。沖縄にはもう、ずいぶん通っていますけど、まだまだ、いろいろありますよ。だから、あれも撮りたい、これも撮りたいな、と」
(アサヒカメラ・米倉昭仁)
【MEMO】三好和義写真展「世界の楽園・奄美 沖縄」
エプサイトギャラリー 10月1日~10月27日