9月30日で全国の緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除された。経済再開への期待が高まるが、ワクチン接種の効果はどこまで期待できるのか。シミュレーションを担当した古瀬祐気・京大准教授に聞いた。
【データ】ワクチン接種後の感染拡大のシュミレーションはこちら
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──新型コロナウイルスのワクチン接種は、9月29日時点で全国民の58.7%が2回の接種を終了し、69.6%は少なくとも1回の接種を終えた。65歳以上の高齢者に限れば、89.1%が2回の接種を終え、90.4%が少なくとも1回は接種を受けた。ワクチン接種が進めば、制約の少ない生活を送れるのか。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は9月上旬、ワクチン接種後の出口戦略についての考え方を公表した。
政府の依頼を受け、分科会が公表した出口戦略についての考え方「ワクチン接種が進む中で日常生活はどのように変わり得るのか?」の土台となるシミュレーションをしました。検討した主な条件は、(1)ウイルスの感染性(2)ワクチンの効果(3)ワクチンの接種率という3項目です。
前提条件をいろいろと変えて推定しましたが、デルタ株の流行が続き、ワクチンの効果は大きくは下がらない、感染予防効果は70%、入院や重症化、死亡を防ぐ効果は90%との想定で、ワクチン接種率が60代以上90%、40~50代80%、20~30代75%に達しても、新型コロナウイルスが登場する以前の生活、つまりマスクをせず、イベントや会食に何の制限もない生活に戻れば、1シーズン(150日間)の死亡者は10万人を超えると予測されました。
■接種率や効果同じでも
一方、多くの人が感染予防を意識してマスクをし、人との接触を40%程度削減するような行動をとれば、ワクチンの接種率や効果は同じ前提でも、死亡者は1万人程度と予測されました。季節性インフルエンザで例年亡くなる方の人数とほぼ同じぐらいです。
人との接触を40%避ける行動というのは、緊急事態宣言が出ていない、昨年の12月ごろの状態に近いものです。
ワクチン接種率があらゆる世代で90%になれば、人との接触を20%削減する行動でも死亡者は1万人と推計されました。