──8月中旬に国内の新型コロナウイルスの大半を占めるようになったデルタ株は、それ以前に流行したアルファ株より感染性が1.5倍高い。アルファ株の時期には、ワクチン接種率が7~8割になれば、感染が広がらない「集団免疫」の状態を達成できると考えられていた。
デルタ株のまん延で、ワクチンのみで集団免疫が達成できる可能性はかなり低くなりました。免疫ができるのは、感染するかワクチン接種によるかです。1度感染した人が再感染したという報告が世界各地でありますし、ワクチン接種完了後の感染、ブレークスルーの報告も後を絶ちません。イスラエルや英国の状態をみると、ワクチン接種2回だけでは、時間とともに効果が落ちてきてしまうようです。
ですので、ワクチン接種と、接触をなるべく避けるといった感染予防の行動の両方を当面は組み合わせる必要があります。
3回目を接種すれば、かなり効果は上がると報告されています。3回目接種の効果がどの程度持続するのかは現時点ではわかりませんが、3回か4回打てば、ワクチン効果がもっと長く継続するかもしれません。
■分科会でも賛否両論
デルタ株の感染力を前提にすると、ワクチン未接種の人の半数以上はいずれ感染します。感染すると、無症状や軽症でも一定の割合で倦怠感や味覚障害といった後遺症が長期間続くこともあります。免疫を獲得するなら、感染より、副反応が出ても数日で治まるワクチンの方がいいと思います。
感染症学的には、集団免疫は感染が広がらない状態のことなので、インフルエンザも集団免疫は成立していません。流行しても気にならない、という広い意味での集団免疫状態には、新型コロナウイルスも数年後にはなるかもしれません。ワクチンで重症化をかなり防げますし、2度目の感染では重症化の可能性は低そうですから。
(構成/科学ジャーナリスト・大岩ゆり)
※AERA 2021年10月11日号より抜粋