医師が患者の自宅に訪問診療をする「在宅医療」。コロナにより、病院よりも在宅医療を選ぶ患者が増えているといいます。では、在宅医療は、どんな人が受けることができるのでしょうか? 好評発売中の週刊朝日ムック『さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん2022年版 コロナで注目!在宅医療ガイド』では、日本在宅ケアアライアンス事務局長の太田秀樹医師に、在宅医療が必要なケースを紹介してもらいました。
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自分で通院を続けてきたものの、加齢などによる体力の低下や関節の痛みなどで歩行が障害されたり、認知症が進行したりすると、通院が難しくなります。家族の付き添いや介助で通院していたけれども、家族も高齢化して介護力が低下すると通院が困難になることもあります。
このようなときに、「お医者さんに家に来てもらい、診療してもらおう」と在宅医療が選択肢として上ってきます。
通院の必要はなかった高齢者でも、徐々に虚弱になり外出できなくなった場合には、その人らしい暮らしを続けるために、在宅医療の利用が必要です。
また、何らかの病気で入院し、退院後も通院が必要ではあるものの、虚弱化によって通院が難しそうというときにも、在宅医療が勧められると思います。病院では地域連携室(呼称はさまざま)のソーシャル・ワーカーや専門の看護師(退院調整看護師)が地域の在宅医や訪問看護ステーションと橋渡しをしてくれます。
医療は、命を救い、病気を治すものです。しかし、治療しても治せない病気や病態があります。高齢者の加齢に伴う慢性的な病気や認知症は、進行を遅らせる薬はあっても治ることはありません。動脈硬化が進み、脳梗塞が起これば、麻痺などの後遺症とともに生活することになります。
がんも、病院で治療を受けて元気に元の生活に戻ることができる人が増えていますが、年齢に関係なく治らないこともあります。加齢による心身機能の低下で、治療を受けられないこともあります。