太田秀樹医師●おおた・ひでき=日本在宅ケアアライアンス事務局長、医療法人アスムス理事長
太田秀樹医師●おおた・ひでき=日本在宅ケアアライアンス事務局長、医療法人アスムス理事長

 このように病気や障害とともに生活していくことになった場合に適しているのが、在宅医療です。一方、病院に行って治療を受けることで病気が治り、以前の活発な生活に戻れるのであれば、病院で治療を受けることが適切です。

 また、本人の意思によっても、選択が違ってくることもあります。「これ以上の治療や検査は受けたくない」と希望する人には、在宅医療が勧められます。逆に通院できる状態なのに面倒だから医師に来てほしいという場合や、初診で往診だけ来てほしいという場合は在宅医療をおこなうわけにはいきません。

 在宅医療では、救命救急医療や手術などを除けば、慢性期病棟とほぼ同じ治療をおこなうことができます。元の病気が治らないとしても、発熱や脱水、痛み、不安など、心身の不調に対して医療は必要で、これらは在宅医療でおこなうことができます。

 また、生活支援も在宅医療の大きな役割となります。治らない病気や障害とともに生きる人にとって、生活をどう成り立たせるか、生活の質をどう維持するかは、重要な課題です。在宅医療は、医療的な対応で心身の状態をできるだけよい状態に保つとともに、生活支援では、介護福祉士など介護の専門職が暮らしを支え、医療と介護が一体的に提供されるものです。

 在宅医療は、がんや認知症、循環器疾患、脳血管障害などさまざまな病気をもつ人が受けています。通院が困難であれば、どんな病気や障害がある人も対象になります。

 筋肉量の減少、かむ・のみ込むなど口の働きの低下など、心身のさまざまな機能が衰え虚弱化した状態(フレイル)の高齢者が増えています。フレイルの改善は、医療の課題の一つとなっており、改善に必要なのは、病院での治療ではなく、社会参加、生きがいづくり、運動、楽しい食事などの支援とされています。また、体調を崩しやすい認知症の人も増え、看取りにいたるまでの体調管理と生活支援が求められています。これらを提供できるのは、在宅医を中心とした医療職や、介護職、地域のサポートです。

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