世界3大音楽コンクールのひとつで、5年に一度開催される「ショパン国際ピアノコンクール」。先日行われた第18回大会では2人の日本人ピアニストが入賞したことは記憶に新しいだろう。世界各国500人以上の応募者から2度の審査を通過し、本大会に出場した日本人は14人。そのうちの1人、沢田蒼梧(さわだ・そうご)さんは、なんと現役の医学部生だ。学業とピアノをどのように両立させてきたのかを聞いた。
* * *
今年10月、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、1年遅れで開催された第18回ショパン国際ピアノコンクール。
「ショパン・コンクールはオリンピックのようなものだと思っていました。自分が出ることになるなんて考えもせず、すごい人がいるもんだなぁって」
今回、同コンクールに初出場を果たした沢田蒼梧さんは、子どものころの心境をそう振り返る。現役の医学部生でもある23歳のピアニストは、自身が「すごい人」の仲間入りをしたことを、思いのほか冷静に受け止めていた。
「でも、ピアニストにとってのコンクールは、発表の場ではあるもののゴールではないと考えています。ピアニストの本分はあくまで演奏会。今回のショパン・コンクールでは2次審査までしか進めませんでしたが、コンクールを通じてぼくを知った方が演奏会に来てくだされば嬉しいです」
ピアノを始めたのは母の勧め。2歳から通っていた地元の音楽教室で6歳から個人レッスンを受け始め、小学4年生からは全国規模のコンクールに挑戦するようにもなった。ピアノを弾くのは楽しかったが、あくまで習い事のひとつだった。
同じころ、ぜんそくの治療で通院していた小児科で優しく対応してくれた医師の姿を見て、医師への憧れも抱くようになっていた。
その後、中学受験を経て、東海地区で最難関と言われる東海中学校・高等学校へ進学。
「小学生のころから活字中毒で、読書が好きなんです。その延長線上で、勉強するのも好きで、中学受験してみようかということになったのですが、『勉強とピアノ、今からどちらもやれるようにしないと、中学に入ってから部活などできないよ』と親に言われ、受験期もそれまでと同じペースでピアノは続けました。ピアノの練習時間を作るために通塾はせず、四谷大塚の『予習シリーズ』を自宅で学習し、『週例テスト』だけ塾に受けに行きました。スケジュール管理は母がサポートしてくれました」