「いつも娘から怒られる」「ついつい母親に厳しくあたってしまう」。そんな母娘関係をよく聞く。それぞれの家庭環境など要因は様々だが、背景には、世代などの共通項もあるようだ。コロナ禍を経験し、新たな価値観も見えてきた。3人の専門家に聞いた。
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母のケース(1)
「先日病院の売店で、ちょっと立ち読みをしたんです。そうしたら娘にひどく叱られましてね。『いい年をしたおばあさんが、立ち読みだなんて品がない!』って」
苦笑まじりに話すCさんは都内で夫婦2人暮らし。娘世帯は駅三つほど離れたところに暮らしている。
「声が大きいだの、みっともないだの。なぜこの年になって娘からケチをつけられなきゃならないのか。でもねえ、同じことを息子に言われても、ここまで腹は立たないと思うの。同性だからでしょうね、きっと」
母のケース(2)
東京郊外に暮らすMさん(86)は、キャリアウーマンの娘夫婦と孫2人と同居中だ。Mさん自身、子育て中の一時期家庭に入ったものの、70代を過ぎるまで仕事を続けてきた。それだけに娘のことは応援したいし、もちろん孫も可愛い。
「孫のしつけにはつい口出ししたくなる。それが内政干渉と映るみたい。娘は常にピリピリしていて、何か言えば何倍にもなって返ってくるんです。先日も話しかけたのに無視されました」
コロナ禍で娘夫婦がリモートワークをしている間は、お茶をいれに階下に下りるのもおっくうになり、居室にミニポットを持ち込んで、顔を合わせないようにしていたという。
一方、娘の立場ではどうだろう。
娘のケース(1)
都内で働くSさん(49)はバツイチ、子なしのキャリアウーマンだ。一人っ子で、70代後半の母と2人暮らしをしている。
「結婚生活は母と同居。しかし母の干渉がきつくて、夫は出ていってしまった。彼のいない家で暮らすのがつらくて、引っ越したんです」
どこに住みたいか相談したところ、今の街を指定したのは母だったが、
「移ってから、やれ病院が遠い、スーパーが良くないと文句ばかり。母は私のすることに満足したためしがない。言い返せば大騒ぎされるので、黙って聞くしかない」