そうして外部の会社と連携をしながらつくったNFTのモザイク画「鉄腕アトム」は、約5300万円、「火の鳥」が約3000万円、「ブラック・ジャック」は約1000万円で落札される。
だが、手塚プロを真の意味で革新的にしたのは、作家の死後も、コンテンツそのものでも新しいものを生み出していることだ。
別のクリエーターが、手塚作品のキャラクターをそのクリエーター独自の解釈で新しい作品にしあげていくのである。
手塚の死後10年は、無理だった。たとえば途中でおわった手塚マンガの続きを他のマンガ家が描くということは、熱烈なファンが許さなかった。
しかし、2000年代に入るとその空気が緩んでくる。
そうした時に小学館からもちこまれたのは、「地上最大のロボット」という手塚が描いたアトムのあるエピソードを、現代にリブートするという企画だった。
浦沢直樹の「プルートウ」である。
以下、次号。
下山 進(しもやま・すすむ)/ ノンフィクション作家・上智大学新聞学科非常勤講師。メディア業界の構造変化や興廃を、綿密な取材をもとに鮮やかに描き、メディアのあるべき姿について発信してきた。主な著書に『2050年のメディア』(文藝春秋)など。
※週刊朝日 2022年11月11日号