どういうことか。
鍵となるのが入試科目だ。早稲田では文系学部の場合、外国語・国語・選択科目、理系学部では外国語・数学・理科の3教科入試が一般的。一方の慶應は10学部中7学部の入試科目に小論文が含まれる。早稲田が第1志望の場合、小論文対策が別に必要なため慶應は受けにくいという。
「早稲田が第1志望の受験生は慶應を併願しづらく、慶應が第1志望の受験生は早稲田を併願しやすいことから、もともと慶應が選ばれやすい母集団。それでも、ここ10年ほどの間で数値が改善されており、そのことは我々としてもうれしく思っている」(城座さん)
なぜ巻き返せたのか。城座さんは「近年、大学で推進してきたカリキュラム改革や広報活動などについて共感が得られているのではないか」とみる。カリキュラム改革の一環として、13年からは全学部の学生がアカデミックライティング・英語・数学・データサイエンス・情報の5科目について、自由に履修できる体制を整えた。また、16年からは職員が全国の高校を訪ね、現在の早稲田での教育・研究方針を丁寧に説明している。
「早稲田は『バンカラ』などのイメージが先行しやすい。教員や保護者世代からすれば大教室で授業が行われる『マスプロ教育』のイメージも強いだろう。ただし今では8割以上の授業が、50人以下の少人数で行われている。かつてと比べ大学も大きく変化していることを伝えたい」
最後に、早稲田の健闘が続く一方で、違う系統学部での比較や大学全体の進学率は、慶應が依然上回っていることに注意したい。同学部対決でみても、看板学部である慶應・法は強い。司法試験の合格者数は、21年は全国1位。早稲田・法と慶應・法にダブル合格した場合、84%は慶應を選んでいる。「慶應ブランド」、いまだ健在なりだ。
◆青山学院が立教を逆転 東京理科の強みは「就職力」
いわゆる「SMART」(上智・明治・青山学院・立教・東京理科)のなかで、同じミッション系大学として引き合いに出されることの多い青山学院と立教。21年の入試では両者の関係に変化があった。ダブル合格した場合、立教を選ぶ傾向が続いていたが、今年は青山学院への進学率が64%と、初めて両者の関係が逆転したのだ。