便利家電や宅配サービスの充実、男性育休の整備──。育児をしながらも仕事を続けられる環境は整いつつある。なのに、女性の負担がさらに大きくなっているのはなぜなのか。家事・育児を「手伝う」ではなく、「協業」し、負担を分け合うにはどうしたらいいのか。AERA 2022年10月31日号の特集「仕事と子育ての両立」の記事を紹介する。
【グラフ】妻とまさかの差…!夫の家事・育児時間の「実態」はこちら
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総務省が実施した2021年の社会生活基本調査によると、6歳未満の子どもを持つ世帯で、夫の家事や育児などの時間は16年の前回調査に比べて1日あたり31分増えて1時間54分だった。これは1976年の調査開始以来、最も長かったが、一方の妻はその4倍近い7時間28分(16年より6分減)。その差は調査開始以来ほとんど変わらず、共働き世帯に限ってみると、夫婦の差は1日あたり4時間38分で15年前と全く同じだった。
男女共同参画白書(21年版)によると、共働き世帯数が専業主婦世帯数を上回ったのは、1997年。以降、その差はどんどん広がりつつある。「イクメン」が新語・流行語大賞のトップ10にランクインしたのは2010年で、もう12年前のことだ。育休制度が整い、女性が出産後も働き続けることや、男性が育児に参入することも「当たり前」になったはずなのに、なぜ、いつまでたっても妻側の負担が大きいままなのか。
■育休が分業を強化する
「皮肉なことですが、育休によって家庭内の分業体制が強化されているのです」
と指摘するのは、父親の支援事業を行うNPO法人ファザーリング・ジャパン理事の林田香織さんだ。育休時代の到来は歓迎すべきこととしながらも、
「男性育休が広がりつつありますが、それでも女性の方が圧倒的に長く休むケースがほとんど。そうすると家事と子育ては妻がひとりでマネジメントして、夫はたまに手伝うだけの主従関係ができあがる。妻の復職後もそれが続いてしまうのです」
この言葉に大きくうなずくのは、10月半ばに第3子を出産したばかりの静岡県の公務員の女性(40)だ。
製薬会社で働く夫(40)は、長男(6)が生まれた時、上司に「育休を取りたい」と申し出たものの認めてもらえず、長女(4)が生まれた時は言い出すこともできなかったという。夫の勤務先が遠いこともあり、育休中はもちろん、復職後も平日はずっと1人で家事と育児をこなしてきた。