全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA 2022年10月10-17日合併号には、家事代行マッチングサービス「タスカジ」のタスカジ・ハウスキーパー、黒田清美(はなみずき)さんが登場した。
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片づけ術の情報はあふれていても、自分に合うものを選んで生活に落とし込むのは、難しい。そこで頼れるのは整理収納のプロ。はなみずきさんは、予約がなかなか取れない人気のハウスキーパーだ。
家まるごと片づけが得意で、住む人と一緒に手を動かして整理し、生活しやすくなる家具配置や収納方法を提案する。
物の量や家の大きさ、希望などで方法が変わるため、まずは依頼者の話をよく聞く。
家全体を俯瞰(ふかん)し、生活動線を考えながらストーリーを描くように手順を組み立てる。
依頼は共働き子育て世帯が中心だが、単身者もいて、好みも様々。靴下や下着は引き出しに収納するが、たたむのが面倒という場合は、内部を箱で仕切ってアイテムごとに入れるなど柔軟に対応する。
たたむ方法もやって見せて、「すっきり感」を本人に体感してもらう。周りが整うにつれ、意識が変わる人もいるからだ。
自身の子育て経験から、子どもが自分で片づけられる仕組みを提案する時もある。登園の支度で、かばんやハンカチなど持ち物をバラバラに置きがちなのを「子どもの手が届く所にまとめて、自分でできる空間を作ってあげる。他の物を交ぜないのがコツ」という。
どこに何があるか見えると皆が動きやすくなり、波及効果もある。「夫が家事に協力してくれない」とよく言われるが、「仕組みや整頓で変わる場合は多い」という。
第三者が入ると風通しもよくなる。
「夫婦二人だとけんかになるから、はなみずきさんがいる場で決めて」と切り出す依頼者もいる。互いに対する不満が出ても、「良い所を見つけて一方を責めない方向に」話を持っていく。
元々、片づけが大好き。13年前、自宅の引っ越しを機に仕事として興味を持った。「お金をいただくプロの仕事になるのか」。時代の変化を感じた。
知識を学び、実地経験を積み、多くの家に通じるノウハウを得て2018年に「タスカジ」に登録。今も経験を重ねる度に自分の引き出しが増えている。
「困っている人に整理収納で役に立ちたい」
整えて終わりではない。「私が帰った後も、気持ちよくいられるように」と、家、引き出し、心にも、風を通していく。(ライター・桝郷春美)
※AERA 2022年10月10-17日合併号