「息子が学校でけんかをした際、仲裁に入った教員から馬鹿にされたと言っている。責任を取れ」と、木刀を持って小学校に乗り込んだ保護者が、管理職2人を土下座させた話などだ。

 保護者対応トラブルに詳しい、大阪大学名誉教授の小野田正利さんは、こう注意を促す。

「本来なら問題にならないような、ささいな出来事で、激高しやすい保護者がいる。そういう傾向の保護者と接するときは、適切な距離の取り方を考えることが重要だ」

 行き過ぎた要求をしてくる保護者が教員だった例もある。

 甲信越地方の中学校の20代教員は、個人的な事情もあり勤務時間内に業務を終わらせ定時退勤していたところ、担任する生徒の保護者に「仕事をせずに遊んでいる」と、デマを言いふらされた。養護教諭をしている母親だった。夫は中学の教員で長時間労働を常としていたため、担任が早く帰るのをサボりと決めつけていた。

 母親は保護者懇談会に毎回必ず出席し、担任の発言やプリントの配布漏れをあげつらい謝罪を求めることを繰り返した。生徒たちからの信頼があつかったこともあり、同調する保護者は出なかったものの、最近、学年主任や校長にまで苦情を訴えていることを知り、担任は閉口している。

 近畿地方の公立中学校では、「ALT(外国語指導助手)がイギリス英語でなくアメリカ英語を話すのが気に入らないから交代させてくれ」と求めた保護者が、他校の英語教員だった。我が子のノートをチェックしては授業のあら探しを行って、校長やPTA会長にまで手紙を書いて、教員の配置換えを訴えた。

 小野田さんは、学校に理不尽な要求をする保護者が教員であるケースは特に多くはないものの、「同業だからこそ手の内がよくわかり、相手の痛いところをついてくるため、攻撃された教員の記憶に残りやすい」と話す。

■民間と異なる学校

「行き過ぎた要求」をする保護者が現れたとき、学校はどうすればよいのか。民間企業のように「相手にしなければいい」と思うかもしれないが、小野田さんは「学校は民間企業とは異なる面も多い」と説明する。

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