生徒、教員、保護者──。閉ざされた空間の学校でも、トラブルは起きる。様々な事例をもとにハラスメントについて考えた。 AERA 2022年8月29日号の記事から紹介する。
【図版】「下着」「水筒の中身」など、かつての“非常識”が“常識”に変わりつつある「保護者の要求」いろいろ
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一部の保護者による理不尽な要求やハラスメントに悩まされた経験のある教員は多い。
「生徒が卒業して2年以上経つのに、保護者からまだ電話がかかってくる」と、顔をゆがめるのは、関東地方の公立中学校に勤務する30代の教員だ。
事の発端は校外学習のグループ決めだった。一人の生徒が孤立していたため、温厚な同級生に声をかけ「グループに入れてあげて」と頼んだところ、生徒本人から「余計なお世話」と逆恨みされてしまった。
生徒は校外学習を欠席し、保護者は教員に謝罪を求めて電話や来校を繰り返すようになった。教員は「生徒が卒業するまで」と自分に言い聞かせ、ひたすら謝罪を続けた。
ところが、本人が中学を卒業しても保護者からの電話はやまなかった。
「高校になかなかなじめない」「資格試験に落ちた」「卒業後の進路が決まらない」
など、生徒のあらゆる問題を中学時代の指導のせいにする。しまいには保護者自身のパート先のいざこざまで、教員の指導ミスが原因と責めた。
■様々な「過度な要求」
教員は「私も親なので子どもを思う保護者の気持ちはわかるが、あまりに行き過ぎ」と吐息をつく。
取材では、ほかにも様々な保護者からの「過度な要求」を耳にした。
中学のバスケ部でレギュラーになれなかった子どもの保護者から「理由を説明しろ」と電話で抗議を受け、毎夜遅くまで家に帰れなかった顧問の話。
進路面談の際、県内の各高校の教育方針や特色など詳細情報を披露し、担任に「こんなことも知らないのか」などと、3時間もマウントを取り続けた保護者の話。
「数学の先生が冷たいせいで娘が学校に行けなくなった。別の教員に代えてくれ」と教育委員会や中学校に訴え、職員室を訪れては当該の教員を呼べと大声で騒いだ保護者の話。