ふわちゃんは本当にかわいく、お利口で、シャーもいわないし大声で鳴くこともしませんでした。夜になって「ここどこ?」という感じで窓辺からお月様を見上げているのを見ると、ちょっと切なくなりましたが、最初の晩からベッドで一緒に寝て、腕枕に体を預けてくれたんですよ。会ったときから私を信頼してくれていました。
◆ 父親の突然の死…ふわちゃんと実家へ
ふわちゃんがやってきて12日目のことです。私にとって晴天の霹靂とも言うべきことが起こりました。
近くに住む70代の父が突然、亡くなったのです。ぴんぴんしていて、前日私も話をし、その日の寝る前まで母とテレビを観ながら笑っていたのに、夜中に背中が痛いと訴えて救急車搬送され、そのまま病院で亡くなりました。腹部大動脈瘤破裂でした。
そこから葬儀が終わるまでの1週間、私は自分のマンションと実家を行ったり来たりしながら、できる範囲で仕事もして、ふわちゃんの面倒をみていました。私は一人娘なので、急に独りになった母のことが心配でした。搬送途中で父に「(自分は)このまま逝く。お母さんのこと頼む」と言われたので、なおさらしっかり支えないと、と思ったのです。
そこで思い切って、49日が終わるまではふわちゃんを連れて実家に帰ることにしました。
ふわちゃんは順応能力が高く、実家にもすぐ馴染みました。仏壇の前の座布団にちょこんと座りながら、日中は過ごしていました。
ときどき、宙をふーっと目で追ったりするものですから、私も「ふわちゃん、おとうさんまだいるのね?」なんて声をかけたりして。私たちに笑顔を運んでくれさえしました。母も後で、「来てくれて心がなごんだ」と言ってくれました。
そうして、49日の法要を終えるまで、ふわちゃんは私と母を静かに見守ってくれました。
◆現実を受け入れることができなかった私の葛藤
マンションに帰ってからも、私はやることがたくさんありました。相続の手続きが残っていたからです。父に相続のことも託されたと感じ、自分ですることにしたのです。カウンセリングの仕事をしながら、慣れない作業を続けました。
一連の手続きが完了したのが6月末。ようやくほっとできたのですが、今度はふわちゃんの様子がだんだんおかしくなってきたのです。