食事はしているけど、便があまり出ないのです。
病院を回り、詳しく検査をしてみたところ……「直腸腺がんだろう」と言われました。9月初めのことです。
直腸に腫瘍ができて狭窄し、肛門の前を塞いでいたため、便がでなかったのです。猫の腺がんは予後はよくないということでした。「年末まで持つかわからない」と言われ、私は言葉をなくしました。
その病気は猫では珍しく、治療は手術になります。直腸を反転させて肛門から出し、がんの部分を取ってまたお腹に戻すプルスルー術という方法です。
手術をすると(肛門を閉じる筋肉がなくなることもあり)便が出っぱなしになるので部屋が汚れます。しばらくはお腹も緩い状態になるし、さらに転移のリスクもある。腫瘍を取ったからハッピーになるということではないようでした。自分で獣医療の文献を探して読んでも、予後は悪いと書いてありました。
ふわちゃんが12歳で手術を受けることは生き地獄になるのかもしれない…。眠れないなか、わたしはふわちゃんを安楽死させようかとも考えてしまいました。
でも行動に移せなかった。目の前のふわちゃんは、ガリガリではないし、不健康には見えないのです。
一方、手術にも踏ん切りがつかずにいました。手術をしてくれる病院はすでに見つかっているのに、ボランティアさんなどに連絡して、「いい先生いませんか」と、また2軒くらい、ふわちゃんを連れて病院に行きました。でも、どの先生にも「予後はよくない」と言われました。
結局、私はふわちゃんががんだとは認めたくなかったんですね。現実を受け入れたくなかったのです。
でもそこから私の中に変化が少し起きたんです。八方ふさがりともいえる状況で、「私のところにこの子が来たのは、なにか意味があるのではないか」と思い始めたんです。
私は家で仕事をしています。だから、(仕事の合間を縫って)様子を見ることができる。そこに来たということは、“体のことを見てくれる人”を猫のほうが選んだのだろう。だったらちゃんと向き合ってみよう、と思いました。