保育料無料の「認定こども園ほろん」。子育ては町の最重要政策で、英語教育も施されている
保育料無料の「認定こども園ほろん」。子育ては町の最重要政策で、英語教育も施されている

 2020年、上士幌町は「第4回ジャパンSDGsアワード」で「内閣官房長官賞」を受賞した。SDGsの達成に向けて優れた取り組みを行う企業や団体が表彰されたが、4団体で唯一の自治体だった。評価の対象となったのは、人の流出に歯止めをかけて地域を活性化させる手立ての充実、畜産バイオガスにエネルギー地産地消と売電、都市と地方の交流・ビジネス展開と「生涯活躍できるまちづくり」だ。注目は畜産バイオガスエネルギーである。

 酪農の町が抱える、いわば畜産公害がある。家畜の糞尿(ふんにょう)の処理だ。畑の飼料にまわすも、とても処理できる量ではなく、夏場は特に臭いがきつい。酪農の町で暮らす宿命と諦めてきたが、“厄介もの”の糞尿が、寄付金を活用して得たプラントを通してバイオマスガス発電に寄与したのである。今は法律上、売電小売業としてビジネス展開をしているが、町の消費電力を十分賄えるだけの発電量も見込まれており、“停電に強い町”となった。

「生涯活躍できるまちづくり」は町長肝煎りの政策の一つだ。町が出資して設立した二つの株式会社の一つが、政策の名を示す「(株)生涯活躍のまちかみしほろ」である。

「町長は税金で金もうけを企んでるのか」

 同町に限らず、自治体が会社経営に乗り出すなどほとんど聞かず、反対の狼煙(のろし)も上がったが、

「行政の行き届かない部分を民間の力で活かす」

 起業支援や人材育成、健康ポイント事業もこの会社の役割で、年に一度、中央から講師を招いて「かみしほろ塾」を開き、“生涯活躍できる”スキルの体得をサポートしている。これまでに東大元総長の小宮山宏氏や冒険家の三浦雄一郎氏、元総務大臣で日本郵政社長の増田寛也氏ら、そうそうたる面々が講演のために日帰り困難なこの地に足を運んでいる。首都圏で開くにもハードルの高い陣容だが、これからの地方のあるべきモデルとして、町の取り組みに賛同してのことという。

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