クリスマスの町の夜空を彩ったドローンによる光のショー(Photo by Kiyota Chihiro)
クリスマスの町の夜空を彩ったドローンによる光のショー(Photo by Kiyota Chihiro)

「ない」ことをアドバンテージに、「ある」ことをうまく活用したが、そこへ降って湧いたのがふるさと納税だった。ただスタート当初、集まった寄付金はわずか1件で5万円に過ぎなかった。が、6年目には2億円を超える浄財が“降ってきた”のである。以後、町の税収を超える9億、15億と実績を上げた。

 かつて、ふるさと創生資金として国から全国の各自治体に1億円が配られたが、使い途のほとんどが箱モノや金の置物、豪華トイレ、「日本一長い滑り台」というのもあった。その後、それらが町の発展につながったという話を聞かない。同じ轍は踏むまいと、そのまま町民に“ばらまけば”ぶ人もいるだろうが、町長がとったのはいち早く基金を創設して積み立てることだった。その年に集まった寄付金を無駄に使い切ることなく、必要に応じて翌年以降も対象事業に充てようとの戦略だ。

 若い世代の移住者の心を打ったのは、保育所に幼稚園機能を加えた町営保育園の保育料を、日本で初めて無料にしたことだろう。この基金が無料化を継続させる担保だ。自然に囲まれ、広い園庭に厳選された食材を使った給食は、都会で入園の順番待ちを強いられている親からすれば垂涎(すいぜん)の的だ。さらに高校生まで医療費は無料。若い世代ばかりに手厚く、高齢者から文句が出そうだが、町長の考えはこうだった。

「誰でも年をとると、どこかここか痛いところが出てくるのは当たり前だ。病気になれば医者にかかるが、黙って指をくわえて病気を待つのではなく、日頃からいかに健康を心がけるかで、幸せな人生に結びついていく」

 たとえば「健康ポイント」事業。町民に活動量計を無料で貸し出し、歩数をポイント化し、その総数を町内で利用できる商品券と交換するサービスを導入した。がん検診や定期健康診断も受診することでポイントを付与。町民の健康への意識が高まった。町長自身、活動量計の数字は、3万歩の日も珍しくない。公用車はとうの昔に廃止し、自宅から役場まではもちろん徒歩、東京出張でも地下鉄一駅区間ならば歩く。

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