写真はイメージです(Getty Images)
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 夫婦間のモラハラがいま、大きな問題になっている。女性側の離婚原因の3位は精神的虐待だという。一方、男性側はだれにも相談できず、問題が顕在化していないだけとみる専門家も。コロナ禍で夫婦ともに家にいる時間が増え、悪化している現状もあるようだ。なぜ、望んで一緒になった相手の心を傷つけてしまうのか。処方箋はあるのか。まずは夫のモラハラに悩む妻の視点から考える。

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 夜、仕事を終えて帰宅した夫は、たちまち不機嫌な表情になった。また今日もスイッチが入ってしまったようだ。

「君は本当にダメな人間だな。何をやってもうまくいかないじゃないか」

 長い説教が始まった。

 きっかけは、些細なことだ。2週間前に付け直したばかりの夫のワイシャツのボタンが、また取れてしまったのだ。私の縫い方が甘かったせいもあるかもしれない。だがボタンを外すとき、必ずと言っていいほど乱暴に強く引っ張る夫の癖にも原因はあるはずだ。

 そう思っても、決して口には出さない。反論したが最後、罵詈雑言のシャワーを浴びせられることが分かりきっているから。だから今日も、夫のほとぼりが冷めるのを、ただひたすら耐えて待つしかない。「どうか昨日のように、朝まで説教が続きませんように」と願って……。

◆矢のように飛んでくる人格否定フレーズ

 東京都在住のAさん(35)。5年前に、4歳年上の銀行員の夫と結婚し、夫婦二人暮らしの生活を送っていた。約1年の交際期間から結婚後しばらくは、夫も優しく、幸せな日々だった。だが同居し始めて半年ほど経ったきころから、夫の態度が徐々に攻撃的になった。

 何かを決めるときには、Aさんの提案に対して、夫は必ず「本当にそれでいいと思ってるの?」と疑問を投げかけてくる。ひとたび夫のスイッチが入れば、「こんなこともできないの?」「君は何もできないダメ人間だ」「人に知られたら恥ずかしい」——お決まりの、まるで“人格否定”のようなフレーズが、矢のように飛んでくる。気づけば、些細なことで長時間の説教が続いたり、激しく罵られたりすることが日常になっていた。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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「機嫌が悪くならないように」顔色ばかりうかがう