さまざまな社会課題の解決にシニアが大きな役割を果たす日がやってくるかもしれない。定年後の人生を社会貢献に捧げるシニアが増えているからだ。専門性がなくてもOK、豊かな人生経験を生かして人や組織をつないでいけば十分に役割が果たせるという。合言葉は「人の役に立つ!」だ。
「定年前後の会社員が、第二の人生で社会貢献の仕事に関わることができるようにするため、彼・彼女らとさまざまなNPOをつなぐ仕組みを作りたいんです。65歳以降もチャレンジし続けたいと考えています」
こう話すのは、「日本NPOセンター」の事務局で働く本田恭助さん(64)だ。
と言ってもNPOの専門家ではない。日用品大手、花王の元社員で定年後、再雇用されてNPOに出向中なのだ。
花王は定年後の再雇用希望者に社内外の配属可能先を紹介する説明会を開いている。本田さんは、「権限もないのに社内に残るのはイヤだ」と思っていたところに、説明会で出向先としてNPOがあるのを見つけて即断した。
「50代半ばから両親の介護の関係で、実家の地域の皆さんに大変お世話になったので、定年後は人の役に立ちたいと漠然と考えていたんです」(本田さん)
ただし実際に仕事を始めると挫折の連続だった。会社員時代の発想で話をすると、即座に「ここは企業ではありません」。1年余りは、ほとんど役に立たなかった。それでも現場で働く人たちと話していると、社会貢献の大切さをひしひしと感じた。多くのNPOが苦手な決算業務などで効率的な手法を紹介すると、徐々に喜ばれるようになっていった。
「マネジメントの部分で『会社員』として身につけた知識や経験は絶対に役に立つと確信するようになりました。それで全国に約5万あるNPOに、さまざまな社会課題を解決したいと考えている志のある『会社員』を送り出せるようにできればと考えるようになったんです」(同)
大手企業に花王のような制度整備を働きかけたり、人材会社に「仕掛け」を持ちかけたり……。現実は厳しく成功例はまだないが、めげずに続けるつもりだ。
本田さんが言う。