「会社員時代の最後の10年、花王社内のいろいろな組織を『つなぐ』仕事をしました。私は何の専門家でもありませんが、人と人、組織と組織をつなぐことぐらいはできます。今後は高齢者の『仕事』の面で、それをやっていこうと思っているのです」
「定年後、どう生きるか」は古くて新しい問題だ。「60歳定年→65歳まで再雇用」が今の主流だが、法改正で昨年度から70歳までの就業機会の確保が企業の「努力義務」となった。
また、さらなる長寿化も予想されることから、これからは65歳以降も働くのが当たり前になっていくだろう。もちろん、体力などを考えると現役時代と同じ調子で働けるわけではない。働く目的も「稼ぎ」だけではなくなってくる。
「会社に依存するのではなく、自分の選択でイキイキとしたセカンドキャリアを送る『自走人生』を作ってほしいですね」
こう話すのは、定年後研究所の池口武志所長だ。かねて50代以降は、それまでの「会社人生」からのモードチェンジが大切と説く。
池口所長が続ける。
「スペシャリストでなくても、長年の経験を生かせる道はあります。その一つが、人や組織をつなげていく力です。連絡役の意味もあるフランス語をつけて、私は『“リエゾン”シニア』と名付けました」
池口所長は、そんな「つなぐ」生き方をするシニア24人にインタビューして、今春、『定年NEXT』という本にまとめた。本田さんはじめさまざまな人の「自走人生」が描かれているが、一つの特徴として言えるのは「人の役に立つ」ことを働く動機にしている人が多いことだ。
高橋巌さん(68)は、「キャリアコンサルタント」という国家資格を生かして人の役に立とうとしている。
元大手事務機器メーカーの部長。法人営業一筋で億円単位のビジネスを手掛けてきた。
54歳の役職定年に合わせて地域の販売会社に転籍した。60歳以降は再雇用されて新入社員や部課長向けの研修を担当してきた。