11日、スノーボード男子ハーフパイプ決勝で、平野歩夢(23)が日本勢初となる金メダルを獲得した。その一方、北京五輪では、雪上競技の練習中に大けがをした日本人選手が相次いでいる。今月3日、スノーボード女子スロープスタイル、ビッグエアの芳家里菜(22)が公式練習中に転倒し、脊椎損傷を負って欠場。5日にはスキーフリースタイル女子の近藤心音(18)も練習中に右ひざの靭帯(じんたい)を損傷し、ビッグエアを欠場した。北京五輪では全面的に人工雪が使用されているが、雪の硬さによる安全面には 選手から不安の声も上がっていた中でのけがだった。人工雪と大けがに因果関係はあるのか。元スノーボード五輪代表の成田童夢(36)に人工雪と選手のケガのリスクについて聞いた。
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今大会の雪上競技は、降雪量の少ない北京市延慶や河北省張家口市での開催となったことから、降雪機をフル稼働させ、人工雪でコースが作られた。
人工雪は天然雪と比べて硬いため、選手のけがも心配されている。アメリカのジェイミー・アンダーソン選手(女子スロープスタイル)も記者会見で「(今大会のコースについて)あまり理想的ではない」と話し、人工雪で作られた硬いバーンを「防弾氷」にたとえ、「絶対に転倒したくない」とコメントしていた。
2006年トリノ五輪スノーボードハーフパイプ日本代表の成田童夢は、引退後、芳家選手と同じ脊椎損傷のけがを負ったことがある。成田からみて、自然雪と人工雪はどう違うのか。
「人工雪は自然雪と比べて粒子が粗いので、気温が低くなると氷のようになるんです。極端にいえば、氷でできたコンクリートと言ってもいいくらいの硬さで、べニヤ板なんかよりはずっと硬いですね。そうした雪で転倒すれば、もちろんケガのリスクはあります」
だが、成田は人工雪の使用について否定しない。競技によっては、人工雪のほうが適していることもあるからだ。
「人工雪のほうが形状が崩れにくいので、同じコンディションで挑みやすい。特にハーフパイプやビッグエアのような(人工)造形物の中での競技では、早く溶けて形が崩れやすい天然雪では、滑れば滑るほど削れてしまうので、後に滑る選手になるほど不利になってしまいます。フェアに競技をする上では、やわらかすぎて形状が変わってしまう自然雪よりも、人工雪の方がいい場合もあるんです」