■「怒りが表現できた」
日本人選手2つ目の金メダルは、スノーボード男子ハーフパイプの平野歩夢だった。中学3年時に出場した2014年ソチ五輪、2018年平昌五輪で2大会連続の銀メダル、さらに2021年の東京五輪ではスケートボードで夏冬出場を果たした。今大会では圧倒的なエアの高さに加えて最高難易度の大技『トリプルコーク1440』を決めて見事、金メダルを獲得した。直後のインタビューで「小さい頃の夢がひとつ叶った」と笑みを浮かべた平野。その言葉も実に平野らしいものだったが、さらに決勝2回目の得点が不当に低かったことについて触れ、「2本目の点数は納得いってなかったんですけど、そういう怒りが自分の気持ちの中で表現できた」と振り返った。終始、落ち着いた口調が印象的で実に“クール”ではあったが、「怒り」という言葉に、平野の“闘志”が垣間見えた瞬間だった。
■「氷に嫌われちゃったかな」
今大会もフィギュアスケートは大きな注目を集めた。男子シングルで銀メダルを獲得した鍵山優真の「頑張ってきた数年間のすべてがつまった銀メダル」、女子シングルで銅メダルを獲得した坂本花織の「びっくりしかないし、うれしい以外に言葉がないです」との言葉も実に初々しく、清々しいものだったが、それ以上に羽生結弦の言葉が印象深かった。五輪三連覇を目指した中で、得意のSPで冒頭の4回転サルコーが1回転となる痛恨のミス。原因はリンクの溝にエッジがハマったことだった。「もうしょうがないなって感じです。自分の中でミスはなかったなって思っている」と振り返った羽生は、怒るでもなく、嘆くでもなく、「なんかちょっと嫌われたな」と苦笑い。SPでの8位からフリーでは4位まで追い上げたが、メダルには届かなかった。演技後の「報われない努力だったかもしれないけど一生懸命頑張りました」の発言にも大きな反響があり、その後に開いた会見で発した「羽生結弦で良かった」という言葉も印象的だった。