起業家 小幡和輝さん(左):1994年生まれ。2013年に起業し地方創生に力を注ぎながら、14年に和歌山大学観光学部に入学。19年に「ゲムトレ」を創業/教育専門家 石田勝紀さん:1968年生まれ。最新刊に『子育て言い換え事典』(共著)、『子どものスマホ問題はルール決めで解決します』(ともに2月24日発売)(写真:本人提供)
起業家 小幡和輝さん(左):1994年生まれ。2013年に起業し地方創生に力を注ぎながら、14年に和歌山大学観光学部に入学。19年に「ゲムトレ」を創業/教育専門家 石田勝紀さん:1968年生まれ。最新刊に『子育て言い換え事典』(共著)、『子どものスマホ問題はルール決めで解決します』(ともに2月24日発売)(写真:本人提供)
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 未だに多くの人の中で強く根付いている学歴重視の考え方。しかし昭和世代にはなかった新たな職業が生まれてきたことで、その考え方は少しずつ変化してきている。AERA 2022年2月28日号の記事を紹介する。

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 かつては専業主婦の女性も多かったが、いまは共働きの時代だ。「女の子も学歴がないと、仕事に就くことができない」と考える親たちも少なくない。それは逆に、「勉強をして、名のある大学に行けば、その先に“安心”がある」と期待してしまうことにもなる。一方、「中学受験をすることが本当に正しいのだろうか」と懐疑的な思いを抱きながら取り組んでいる親も少なくないのではないか、と2016年から「ママカフェ」を主宰し、これまで1万人を超える母親たちの相談ごとに耳を傾けてきた教育専門家の石田勝紀さん(53)は感じている。

「自分の子どもにとって適切なアプローチは何か、ということがわかっていればそうした情報に振り回されることもないですが、わからないからこそ周りの情報に頼らざるを得ない。根底にあるのは、『不安』と『焦り』だと思います」

 意識の奥底に根を張る学歴信仰から解放される術はあるのか。

 10年にわたる不登校を経て、幼い頃から得意のゲームを武器に、ゲームのオンライン家庭教師サービス「ゲムトレ」を立ち上げた小幡和輝さん(27)は「そもそも多くの人が20歳になる頃までに、大学名に勝る実績や強みを作れていないのが問題ではないか」と話す。

「たとえば、将棋の世界で活躍する藤井聡太さんが『高校を辞め、将棋に専念します』と宣言しても誰も何も言わないですよね。逆に、大谷翔平選手が『メジャーを蹴って、大学に行きます』と言ったとしたら、みんな止めると思うんです。大学のブランド力よりも遥かに上回る実績があれば、必ずしも大学に行く必要はない、という共通認識はあり、そうしたものがないからこそ“就職するための資格”として大学や学歴を捉えている人が多い、と感じます」

 自身は、大好きなゲームを続けながら、定時制高校に通い、18歳で初めて起業した。推薦入試で和歌山大学に首席で進学したのも、自身の強みを生かした結果であり、大学に行くための勉強はほとんどしてこなかった。けれど、大学卒業後に一般企業に就職している同世代と自分を比べ「自分は劣っている」と感じることはないという。

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