没頭することも才能

 大学時代のオンライン同窓会をし、大学時代の話になると、「サークルが楽しかった」「いい友達ができた」といった勉強以外の話に終始するのにも違和感を持った。「大学でこの研究をしたから、いまこの仕事をしている」と堂々と口にする同窓生は、社会人を経て、学び直しのために大学に入学した同窓生に多いという。

「社会に出てから仕事をする、収入を上げていくということを考えると、いまは大学に行くよりもプログラミングスクールなどに通う方がよっぽど現実的だとも思います」

 それでも、大学に行くことが無駄かと言われれば、そうは思わないと小幡さん。教員の話を真剣に聞き、自分ごととして理解する。本を読み、情報を得る。勉強することは悪では決してなく、学び続ける力や情報処理能力といったものは、勉強することで初めて得ることができるという。世の中でそのまま役に立つことも多々ある、と感じる。「けれど、国語・算数・理科・社会だけが“学び”ではないと思うんです」と小幡さんは言う。

「僕の場合はゲームでしたが、1日10時間以上もやり続けたいことを子どもの頃に見つけることができた。それはそれで、幸せなことだったなと思います。子どもが一つのことに何時間も没頭し、突きつめようとする。それはなかなかできることではなく、これもまた『才能』である、ということを親御さんたちには認めてほしいと思います」

 前出の石田さんも、「子どもの長所は、英国数理社の5教科の中には入っていない可能性がある」と話す。

 学歴を重視する考えから主体的に逃れるには、「子どもたちに長所をいかに意識させられるか」だと石田さん。

「当たり前のように向き合っているので、子ども自身は長所には気づかないことも多い。ですが、『実はそれがすごいんだ』と認め、声かけをすることによって自己肯定感が上がる。自己肯定感が上がると、自ら苦手なことにも取り組むようになる。その子の能力を認め、自身の長所として意識させていくことが、学歴にとらわれずに生きていくことに繋がるのだと思います」

多様なルートへの転換

 たとえば、「小学生が将来つきたい職業」にYouTuberが初めて男子1位に選ばれた19年当時は、まだ親の価値観が追いついていなかった。けれどその後、大人たちは実際にYouTuberたちが活躍しているのを目にし、自分たち世代には存在しなかった新たな才能をはっきりと認識するようになった。“不登校”に対しても、それをネガティブに捉えるのではなく、小幡さんのようにその道を経て活躍する人を多く見て、価値観が変わってきている。石田さんは言う。

「より多様なルート、明るい未来が見えるようになってきた。そうした意味でも、いまは転換期とも言えるのではないか、と思います」

(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2022年2月28日号より抜粋

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