【ケース6】家族が「介護うつ」になる

 介護生活が長くなってくると、家族に負担が集中し、どうしても「自分ばかり負担を強いられている」という気持ちになりがちだ。兄弟姉妹での介護への関わりの度合いや、金銭的なことも含め、親族間で不公平感が表面化するケースが少なくない。また親の介護と子育てのダブルケアや、仕事と介護との両立に直面している人もいる。

 介護は誰か一人に負担が集中してしまうと、「介護うつ」を招き、心が折れてしまうことがある。そうならないために介護保険サービスをうまく活用し、あくまで無理せずにできる範囲でサポートする姿勢を心がけたい。

「自分が直接的に手を出すことだけが介護ではありません。支える家族が、介護のために仕事を辞めるのはできるだけ避けて。在宅医療と在宅ケアを利用しながら、仕事と介護の両立は十分に可能。訪問看護や訪問介護、デイサービス、ショートステイなどのさまざまな介護保険サービスを組み合わせて、フルタイムで働きながら介護を継続されている方もたくさんいます」(中村医師)

 蓄積した思いを誰かに話したいと思ったら、「介護者の会」などに参加するのも手だ。地元の地域包括支援センターなどに相談すれば紹介してくれる。介護の苦労は実際に経験した人でないと本当のところがわかりづらい。日頃の苦労話をお互いに語り合うことで、気持ちの整理がつくこともある。

 在宅死の希望がかなうかかなわないかは、本人の思いに始まり、家族の協力や理解も鍵になる。在宅死を実現させようとするなら、意思を明確に表示し、受け身ではなく自発的に動いていく姿勢が必要だ。「最期は家で迎えたい」、まずはその思いを口に出すことが、実現のための大きな一歩になる。(フリーランス記者・松岡かすみ)

週刊朝日  2022年3月25日号

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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