※イラストはイメージです
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 年間100人以上の在宅看取りを支える中村明澄医師(向日葵クリニック院長)は、こう話す。厚生労働省の調査(平成29年度人生の最終段階における医療に関する意識調査報告書)によると、自宅で最期を迎えたいと思っている人は約7割に上る。だが実際に在宅死が実現した人は、約14%とおよそ7人に1人。7割が自宅での最期を希望しているのにもかかわらず、それが実現できていない現実がある。

 病院での死がほとんどである今、「家で死ぬ」ことは、本人と家族が強い意志を持たないと実現できないと言っても過言ではない。病院側から在宅医療を勧められたり、誰かがお膳立てしてくれたりすることなどは基本的にはない。本人や家族が明確な意思を示し、在宅死の実現のために自ら動いていく姿勢が必要だ。

「待っているだけだと、在宅に移行するのは難しい現状があります。ですが、病院の医療相談室や在宅医、看護師、ケアマネジャーなど、在宅療養生活への移行やスタートをサポートしてくれる人はいます。在宅療養のために、自分たちが選択して決めていくという姿勢を忘れず、わからないことはなんでも質問したらいい」(中村医師)

 こうした姿勢を踏まえた上で、在宅死がかなわない理由として実際に医療現場で散見されるケースと、その対策を見ていこう。在宅療養生活を考えるときの注意点として参考にしてほしい。

【ケース1】本人と家族の思いがすれ違う

 本人と家族の間での遠慮と気遣いが、思わぬ裏目に出ることがある。互いに気を使うあまりに本音を伝えられず、本当に望んでいる方向に進まないというケースだ。

 例えば、在宅を希望していた本人から突然「入院したい」という話が出る。家族としては、最期まで介護するつもりでいたため「やっぱり家じゃ不安なんだ」とショックを受ける。だがこの時期にそんなことを言って本人につらい思いをさせたら可哀想だ。そこで、ぐっと思いをこらえて入院の選択に同意する。だが本人の本音は、「本当は入院なんかしたくない。ずっと家にいたいけど、家族の迷惑になるから入院したほうがいい」。互いを思いやるあまりに言葉が足りず、汲み取りきれずにぎくしゃくしてしまうのだ。中村医師は言う。

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