西原:お金と見た目の問題は想像以上に深刻です。就職ができない→お金が稼げない→ホルモン治療などができない→トランスがうまくいかない→見た目が変わらない→だから就職ができない、という負のループに陥っている子が多くて。生活保護を受けている子もいるし、漫画喫茶をはしごしている子もいる。洋服だってゼロから買う必要があるし、地味にお金はかかりますよね。

浅沼:手術代を貯(た)めたくても貯められない状況があるのは知ってほしいです。そもそもトランスジェンダーの場合、病院を見つけるのも大変ですよね。たとえばメンタルが悪くなっても、病院でトランスのことを気軽に話せなかったり、理解してくれる先生に出会えなかったり。地方だと、同級生や親戚など顔見知りの人と出会う可能性もあるから、トランスとバレる恐怖感や不安感の方が大きくて、病院に行けないケースもあります。

西原:性別適合手術もそうだし、ホルモン注射にしても、家の近所で打ってくれるところはあまりないですし。私、16歳からホルモン治療を始めたんですけど、誰にも言えなかったので、お医者さんに頼らず自分で始めました。ネットの掲示板の情報を見ながら、個人で薬を輸入して。もちろん、途中からお医者さんに行って治療したんですけど。

浅沼:僕も行ったことあります、闇クリニック。薦められないですけど、それだけ気持ちとしては追い詰められている。

■違うパズルを始めよう

西原:私みたいに、とりあえず女性化を急ぎ過ぎて、健康を度外視して薬や注射を打っちゃうとか多いんですよね。今すぐ変わりたい気持ちがすごく大きくて。でも、長い人生で考えたとき、一歩ずつでも前にすすめていたら必ず結果につながるので、急ぎ過ぎず、目の前の階段を一段ずつ上がってほしいな。

(構成/編集部・大川恵実)

>>【後編:「性別移行で得た経験は社会を変える武器になる」 トランスジェンダーの2人が語り合う自分らしい生き方】へ続く

AERA 2022年4月4日号

暮らしとモノ班 for promotion
「更年期退職」が社会問題に。快適に過ごすためのフェムテックグッズ