3月31日は「国際トランスジェンダー可視化(認知)の日」。当たり前の存在なのに、様々な差別や困難に直面しています。当事者の2人が語り合いました。AERA 2022年4月4日号の記事を紹介する。
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——浅沼智也さんは女性として生まれ、いまは男性として生きている。西原さつきさんは男性として生まれ、現在は女性として生活している。それぞれ20代で性別適合手術を受けた。浅沼さんはトランスジェンダーをテーマにした映画の製作や、マイノリティーの人たちが生きやすくなるための活動を積極的に行う。西原さんは主にMtF(エムティーエフ)(出生時に男性という性を割り当てられたが女性を自認する人)のための「乙女塾」を運営している。
西原さつき(以下、西原):「乙女塾」では、女性に近い声を出すためのボイストレーニングや、メイクレッスンをしています。一番人気なのがボイスレッスン。私たちの場合、声変わりをして一度低くなると、治療をしても声はあまり変わらないんですよ。声に悩んでいる人はとても多くて。
浅沼智也(以下、浅原):僕はトランスジェンダーの当事者として差別偏見なく生きられる社会になればいいと思って活動を始めたんですけど、周りには自己肯定感や自尊心の低い当事者が多く、メンタルヘルスが低下している人もたくさんいる。うつ病や発達障害を抱えるダブルマイノリティーもいて、命を落とした人もいます。
■見た目で判断される
西原:私が感じているのは、トランスの貧困問題です。MtFの人って、就職率があまり高くないというイメージがある。見た目の問題で就職がうまくいかない子もいるし、自尊心が低い子が多いので、面接なんかで自分の持ち味をなかなか発揮できないタイプも多い。あとは、会社側も同じような能力の人がいるなら、トランスじゃない人を採っておこうかな、というのも残念ながらあると思う。
浅沼:頑張って就職しても、就職先でアウティングされることもありますしね。